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2007/12/25

小田急相模原駅文化交流プラザ(おださがプラザ)オープン

小田急相模原駅文化交流プラザ(おださがプラザ)が、12月2日にオープンしました。弊社は当施設の音響設計を担当いたしました。
この施設は同日オープンした小田急相模原駅直結の商業施設『Rac-AL odasaga(ラクアル・オダサガ)』内にあり、交通がとても便利で、またスーパーマーケットを含む商業施設と高層集合住宅との複合施設となっており、人が集まりやすい施設です。さらにこの施設の特徴は、多目的ルームで音楽の練習や演奏会、演劇などの公演が出来るように、防音のための浮き構造を採用したことです。これによって90デシベルほどの音を出すクラシック音楽、軽音楽や歌の練習でも、隣接したミーティングルームや階下の店舗などに音の影響がでないようになっています(ただし、ロック系軽音楽などの場合は100デシベルを超えるような音圧レベルとなるため、会議室や階下の店舗に多少影響が出る場合も考えられます)。
この多目的ルームは、12.5m×19.5m、約240平米というかなりの広さがあり、ギャラリーや講演会、また合唱や演奏会、多人数の音楽の練習、演劇の練習、社交ダンス、ハワイアンダンス、エアロビクス、カラオケなど様々な用途に活用することができます。少人数での利用の場合は、2つの可動遮音間仕切りで3室に仕切れるようになっています。可動間仕切りのうちひとつは遮音性能の高いものを使用しています。
竣工後の測定では、残響時間は室全体では0.8~1.0秒程度、3室に分割した場合には0.6~~0.7秒程度となっています。室用途が講演からクラシック音楽までを対象としているので、響き具合については声の明瞭性と音楽のための響きを考慮したバランスの取れたものとなっています。オープン以来、たくさんの方にご利用いただいているようです。

設計:パシフィックコンサルタンツ株式会社
文化施設の内装設計:フレームデザイン株式会社 
施工:安藤・藤木・小田急・櫻内建設共同企業体

多目的ルーム




ハーフPCaボイドスラブの減衰定数についての論文が日本建築学会技術報告集第13巻第26号に掲載されました

ハーフPCaボイドスラブの58箇所の床振動実験を行い、その減衰定数を分析した結果を日本カイザーの堀内さん、ボイドスラブ協議会の佐藤さんと共同執筆いたしました。

集合住宅のボイドスラブは、振動減衰波形にうなりを生じているものが多く、単純な対数減衰率から求めることが出来ないために、シュレーダー法による減衰波形から残響時間をもとめ、その値から減衰定数を求めました。その結果、うなりの原因は隣接するスラブの固有振動数が近いために影響を受けていること、またこのハーフPCaボイドスラブの減衰定数はおおよそ1.7%であることが求められました。一般的なコンクリートスラブの減衰定数2~3%の値より小さな値となっていますが、これはボイドスラブの剛性が大梁と比較して大きく、小梁などの減衰要素が無いためと考えられます。環境振動などの影響を考えると減衰定数は大きいほうが良いと思われ、小梁に変わる減衰要素によって減衰を大きくすることも今後の課題と考えられます。

分析を指導していただいた信州大学の山下先生、分析に協力をしていただいた同じく信州大学修士課程の森川さんに大変感謝をしている次第です。また論文の評論をしていただいた日本大学の井上先生、鹿島建設の安藤さんにこの場で、感謝の意を表します。

この床振動実験は、ボイドスラブの実験方法、その評価方法、振動に関する設計方法などを検討するために行った実験であり、目的に沿って今後とも継続していく所存です。

2007/12/10

第13回全国芝居小屋会議に参加

ご報告が遅れましたが、11/24~25に川越で開催された全国芝居小屋会議に参加し、木造芝居小屋の音響特性について発表いたしました。

11/23には、群馬県渋川市赤城町の上三原田農村歌舞伎を見学しました。2日後にこの会場で、全国地芝居サミットがこの会場で行われる予定で、その日はリハーサル中でした。

リハーサルの様子



この屋根は、この日のためだけに3ヶ月もかけて作られたそうです。その後、群馬県みどり市大間々町のながめ余興場を見学しました。ちょうど桐生・みどり地区高等学校合同音楽祭が開催されていて、桐生女子高等学校管弦楽部の演奏を聴きましたが、指揮をしている先生も学生も乗って演奏しているのが良くわかりました。





そして11/24には川越のスカラ座で、「講演・事例報告」が行われ、その中で「芝居小屋の失われた音を探して」という題目で発表させていただきました。発表内容は、下記にご紹介します。





その他、山鹿市立博物館館長の木村理郎氏より「八千代座 市民運動と芝居小屋再生について」、全国芝居小屋連絡協議会技術支援部門代表の賀古唯義氏より「芝居小屋の守りかた・活かしかた」、そして早稲田大学演劇研究センター講師、常磐津和英太夫 鈴木英一氏による「歌舞伎の音そして空間について」と常磐津のミニライブで盛り上がりました。

講演・事例報告会の後、川越の木造芝居小屋の鶴川座の見学会が行われました。現在の所有者である蓮馨寺の住職が、木造芝居小屋に復原する決意を述べられていました。それは、今回の芝居小屋会議の最大の成果ではないかと考えます。近いうちに、木造芝居小屋に復原する作業が開始されそうな勢いでした。

鶴川座の見学

11/25の総会では、来年復原が完了しオープン予定の兵庫県豊岡市出石町の永楽館が会員となられ、来年の全国芝居小屋会議は永楽館で開催されることが早々に決定しました。

私の発表内容を下記にご紹介します。発表は神奈川大学建築学科寺尾研究室の4年生高見鉄兵君と共同で発表いたしました。

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●はじめに

昨年より、劇場演出空間技術協会(JATET)に、建築家の山崎先生が中心となり「木造劇場研究会」が発足し、木造芝居小屋を主な対象として研究が始まりました。
昨年、全国芝居小屋会議に出席し、初めて嘉穂劇場と八千代座という木造芝居小屋を体験しました。嘉穂劇場は三井三池炭鉱の街にあり、昔は周辺に40軒ほども木造芝居小屋があったと聞き大変興味を持ちました。また、今年の四月には金毘羅大芝居を観劇しました。そしてこの夏には実際に芝居小屋の音響測定を致しました。測定に先立ち神奈川大学の建築学科の寺尾教授にご協力を依頼し、またカメラマンであり「芝居小屋大向こうの会」の永石さんの熱意で実現しました。

●建築音響学の歴史

建築音響学の歴史は、ボストンシンフォニーホールの音響設計をしたSabineの残響理論に始まると言われています。竣工は1900年、今から約100年前です。そのホールは現代でも、3大ホールの一つと言われています。その他は1870年に出来たウイーンのムジークフェラインザール、1888年に出来たアムステルダムコンセルトへボーです。
実は、音響設計といっても残響時間しか考えていないボストンシンフォニーのすばらしさは、偶然の賜物でした。その後1962年に出来た、ニューヨークフィルハーモニーホールは、世界中のホールを調査して設計されたもので、その調査結果は世界的名著になりましたが、ホール自体の評判は悪く、4回も改修したのち、さらに全面改修が行われ1976年にエヴリフィッシャーホールと言う名称に変更されています。当初のホールの形は、たる型でしたが、現在は長方形のような形です。そのニューヨークフィルハーモニーの翌1963年に開館したベルリンフィルハーモニーは評判がよく、それをたたき台にして1986年に日本でサントリーホールが竣工しています。
ホールは残響時間だけではなく、直接音と、直接音から50ms~80ms以内に到来する初期反射音、それに側方の反射音が非常に重要と言うことがやっと1960年代にわかってきました。日本では1957年の杉並公会堂以来、たくさんの多目的ホールができ、1961年の東京文化会館で1つの技術的なピークを迎えました。その後、多目的ではない、目的を明確にしたホールが要求されるようになり、現在では質の高いコンサートホールがたくさん出来てきています。
これまで我々音響技術者は、ヨーロッパのモーツアルトやベートーベン、またブラームスの時代のクラシック音楽を対象として、しかもかなり大きなホールを前提に、好ましい豊かな響きが得られることを主な目的とし、残響の長いホールを目指して設計を行ってきました。ところが、木造芝居小屋は、床は畳、壁は障子や襖、天井は無いような、あるような、いずれにしても吸音性の材料で出来ています。残響が長いわけがありません。木造芝居小屋は、今まで音響技術者が求めてきたものとは正反対のものでした。

●実験の目的

日本の伝統芸能を育んできた木造芝居小屋と、現代の一般的な形の多目的劇場の音響測定を行い、その音響的特徴を比較しながら確認しました。測定を行った木造芝居小屋は岐阜県の中津川市および下呂市にある4座で、鳳凰座、白雲座、常盤座、明治座です。多目的劇場は、横浜市磯子区民センターの杉田劇場にご協力いただきました。もともとこの敷地には戦後に同じ名前の杉田劇場という木造芝居小屋があり、それが名前の由来となっています。

一般的に、音響上の物理的指標は、残響時間周波数特性がよく用いられますが、今回の実験の大きな特徴は、その他に劇場空間の音のインパルス応答を求めたことにあります。インパルス応答とは、拍子木の音のようなパルス音を舞台上で発し、客席でその直接音と壁や天井からの反射音の時間的経過を表したものです。しかもそのパルスは大きさが1で、時間がゼロといった物理的な基準を持つパルスであるために、その劇場に対するインパルス応答は無響室録音した音楽や音声とコンピュータ上で重ね合わせることで、あたかもその劇場の客席で演奏や話を聞いているようにシミュレーションできるものです。そのシステムによって、様々な音を用いて各地の劇場の音を再現し、耳で比較することができるようになります。今回は、日本の伝統的な楽器である三味線と、もっとも響きが必要と思われるヴァイオリンの無響室録音した音を用いています。三味線は、同日に講演される常磐津和英太夫さんと常磐津菊与四郎さんにお願いして、神奈川大学の無響室で録音を致しました。

クラシック音楽のための最適残響時間という指標では、残響の少ない木造芝居小屋を評価することはできません。しかし実際、日本の伝統的な音楽に対して、それを育ててきた木造の残響時間はどう評価されるのか、やはり短いと感じるのか、それとも好ましく感じるかどうか、耳で聞いて確認をしてみようというのが実験の主旨です。

発表では、ここで木造芝居小屋4座と杉田劇場の音を聴いて比較していただきました。

残響時間測定結果の紹介、 杉田劇場は音響反射板設置時のものです。
平均吸音率の測定結果の紹介
無響室録音の演奏音
インパルス応答測定結果
シミュレーション結果
明治座の三味線、杉田劇場の三味線
明治座のヴァイオリン、杉田劇場のヴァイオリン
鳳凰座、白雲座、常盤座、杉田劇場の三味線
鳳凰座、白雲座、常盤座、杉田劇場および無響室録音のヴァイオリン

●まとめ

私の感想としては、木造芝居小屋の三味線の音は自然な印象ですが、残響の長い杉田劇場で演奏した三味線の音は、風呂の中で歌っているような、あるいはオペラを歌っているような感じです。ヴァイオリンの音色に関しては、芝居小屋ではクリアな音ですが、杉田劇場では朗々として空間を充満させています。このヴァイオリニストにもある程度評判はいい劇場です。
何ゆえ、芝居小屋の三味線は自然に聞こえるかは、これからの研究テーマです。考えられるのは、三味線の無響室録音の音の波形は魚の骨のように分離していますが、ヴァイオリンの音は連続しているためではないかと思っています。音が分離していれば残響が短いほうが、その特徴を保持できます。しかしヴァイオリンの連続音はホールの拡散音で補強されることを期待しているのではと想像しています。しかし、このような仮説を立ててもすぐ覆される別の状況もあります。たとえば、篠笛や尺八は連続音ではあるが、どのような空間が好ましいのか?ピアノは打撃音なので、どちらかと言うと不連続音ですが、これはどうか?二胡はヴァイオリンのような弓で弾く楽器ですが、どのような音響空間が好ましいなのか?
 さらに、最近はヨーロッパで屋外のコンサートが流行っていると、ある音楽家がラジオの対談で言っていました。ヴァイオリンの音にあわせて、小鳥も鳴いて、とても気持ちが良いそうです。しかし屋外ですから、ホールのような響きはありません。以前、ウイーン郊外のホイリゲという屋外のレストランでワインを飲んでいた時に、ヴァイオリンの流しが来て、ヨハンシュトラウスを聞かせてくれたことがあり、これも気持ちが良かったです。したがって、楽しむという状況さえあれば、音の場合にはかなりいろいろ許されると言うことではないかと思います。

そこで今日のタイトルですが、「芝居小屋の失われた音をさがして」は、私がつけたテーマではないのですが、感心しています。これは、我々音響技術者に向けた警告と受け取れます。要するに、芝居小屋のような空間が現在ほとんどなくなってしまった、それが問題です。三味線は、そのような空間で聴くのが自然に聞こえるからです。おそらく、そのほかの楽器、琵琶、尺八や和太鼓なども木造芝居小屋の中で演奏されるのが、現代の多目的劇場で演奏されるより自然であろうと思います。それならば、インドの音楽はどうなのか、中国の音楽はどうなのか、様々な音楽に対して、建築音響学はまだ対応していないことがわかります。

音楽や演劇の歴史は4000年、建築音響学の歴史は100年です。今日は残響について主に御話をしましたが、芝居小屋には、コンサートホールには無い、もう一つ大きな特徴があります。それは音の方向感があることです。シューボックスタイプのコンサートホールは後のほうで聞くと、楽器の音が舞台の大きさの綿飴のような感じになって聞こえます。それはハーモニーを大事にするからですが、音の方向感は薄れます。臨場感は音の方向感も重要な要素です。木造芝居小屋では、残響が少ない分、直接音成分が多く、音の方向感が出てきます。しかも舞台は花道で、演者は客席まで入り込んで演じます。お客さんの前後左右から音が飛び交います。これもすばらしい特徴です。しかしこの特徴も、マイクで拾って、スピーカーから音を出すと消えてしまいます。声を発している人から聞こえないで、スピーカーの方向から聞こえてしまうのです。これは気をつけねばいけない事柄の1つです。

9月のはじめにイスタンブールに音響学会の発表のために行って来ましたが、イスタンブールでは、ザーズと言うマンドリンのような民族楽器をもって歩いている人が結構います。それは楽器ですか、と聞くと、ケースから出して弾いてくれる人もいました。みやげ物屋にも、このザーズが置かれていて、お店の人が弾いてくれたりします。楽器屋さんでは、このザーズが天井一杯にぶらさがっており、それ以外にザーズより少し大きい楽器と、柄が折れている琵琶のような楽器がほとんど、後は太鼓やアコースティックギターがあり、電気楽器は少ないです。日本では、町を御歩いている人が持っている楽器はほとんどがエレキギターです。三味線を持っている人に会うのは京都の祇園ぐらいではないでしょうか。
改めて日本の文化と木造芝居小屋を見直していく所存です。

2007/11/07

第十三回全国芝居小屋会議川越大会にて発表いたします

11/23(金)~25(日)に開催される、第十三回全国芝居小屋会議川越大会にて、発表させていただく予定です。

発表日時は、11/24(土)15:20~17:00
「芝居小屋の失われた音をさがして」というタイトルで、
下記の内容(芝居小屋会議チラシより引用)となっております。
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日本の芸能は日本の空間で育った。日本固有の「芝居小屋」や「座敷」などいわゆる「日本の空間」の持つ性質と、そこで育まれた芸能のあり方は不可分である。その日本固有の芸能空間である木造芝居小屋の音響測定を行い、映像と共にその音響的特性を示して、日本の劇場的空間について議論を行う。さらに様々な分野の方から江戸の芝居小屋空間の研究発表等と合わせて、近代(西洋)化により失った日本固有の空間の魅力を浮彫りにし、これからの劇場空間のあり方を示す。
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この会議は、全国各地の古い芝居小屋の保存と再興を考えるもので、昨年も参加させていただきました。
その時の様子はこちら。
第12回全国芝居小屋会議(1)
第12回全国芝居小屋会議(2)

ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
なお23日は、プレイベントとなっています。
お問い合わせは下記まで。

問い合わせ先:全国芝居小屋連絡協議会 事務局
       0277-73-1195
当日連絡先:049-223-0733 スカラ座内

全国芝居小屋会議川越大会の詳細はこちら

2007/11/05

和太鼓の練習場『太鼓の里 響和館』オープン

400年の歴史のある浅野太鼓楽器店の祐天寺の和太鼓の練習場『太鼓の里 響和館』がこの10月19日にオープン致しました。弊社は、その音響設計・工事監理を担当いたしました。
設計に先立ち、浅野太鼓楽器店本社において、様々な和太鼓の音の大きさや周波数特性を計測いたしました。5名で演奏した場合には125Hz帯域で120dBを超えるような音圧レベルが発生することがわかり、音楽のジャンル中で最も大きな音を出すものだと思います。ロックバンドの演奏よりも大きな音です。
このような大きな音を出すことのできる練習場を設置できる場所は限られます。この『太鼓の里 響和館』は、駒沢通りに面して立つワンルームマンションの建物の地下にあります。この建物の1階は宅配ピザ屋となっており、上階の住宅とこのマンションの地下で練習場にはドライエリアがあり、隣接する住宅に音が伝搬しないように特に配慮いたしました。
竣工検査時には、およそ15名で和太鼓をたたいて検査を行いました。ドア外やドライエリア、2階の住宅など、様々なところで測定いたしましたが、設計当初の目標を満足した結果となっております。耳でも聞いて確認いたしましたが、ほぼ聞こえない状態となっています。
太鼓の里響和館が栄え、練習に参加した地域の子供たちが、元気に健やかに成長することを祈っております。

設計:株式会社ビーエックス 馬場祐三氏
工事:株式会社ソナ(音響工事専門の工事会社)


オープニングパーティの日


竣工時の測定の様子(1)


竣工時の測定の様子(2)

2007/10/01

展覧会「THIS PLAY!」 21_21 DESIGN SIGHTの印象

 東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHTにおいて、財団法人 三宅一生デザイン文化財団主催の「THIS PLAY!」という展覧会が開催された。その展示で、音響デザインを担当された作曲家の畑中正人氏と、ヤマハの音響の清水寧氏の講演が9月21日18時半からありました。

 展示に使用されている音楽は、ゆったりとしたリズムのきれいなピアノ曲です。それが天井や壁などあちこちから、清水さんの言葉でいうと、音のプラネタリウムのように、星の光がふってくるように時々聞こえてくるものです。その原理は、指向性のトーンゾイレ型スピーカから放射方向を制御しながら、壁や天井に向かって放出し、反射した音が聞こえてくるものです。音が来る方向にはスピーカはなく、宇宙的な不思議な空間の広がりを感じさせるものです。
 
 展示室はいくつかの部屋に分かれていて、服に関係したディスプレイ風の展示とそれに合わせた音響―音楽があります。ある部屋は小鳥のさえずりと木の葉ずれの音で部屋を充満させ、55dBAもあるそのノイズにより隣から来る音を「やわらかく」遮音(マスキング)しているそうです。55dBAは、普通に考えると、うるさく感じる騒音の音量ですが、非常に自然に聞こえます。建物は安藤忠雄氏の設計によるもので、例のごとくコンクリート打ち放しのために残響が長い空間なのですが、このノイズによってその残響の長さを感じさせないようになっています。この方法には可能性を感じました。
 
 私は清水さんに、宇宙的な音響空間とこのノイズの可能性を評価したうえで、しかし安藤忠雄氏の空間は静かそうに感じるが実は騒々しく、また聴覚的には自然の中にいるようだけれど、視覚的には単なるコンクリートの空間の中であり、双方ともトリックのようだと伝えました。視覚空間と聴覚空間は、本来は一致すべきであると思います。

 この方法は、このような特殊な空間では実験的に可能性を開くものと考えられるし、また商業施設などにおいても、騒々しい中で空間を分けて個々の空間を作り出す可能性があります。ただ、講演でも質問がありましたが、事務所または住宅などでは、このような方法で(自然の中の美しい音を使って)「柔らか」な騒音対策を試みても、普段は存在しない音に対しての違和感が出てくるように思います。

2007/09/07

JATETフォーラム2007に参加しました

JATET FORUM2007が「舞台技術の今後の方向性」というテーマで、9月4日(火)~5日に、日本大学理工学部1号館6階CSTホールで開催されました。
弊社は2日連続で発表をさせていただきました。初日は「建築音響技術の変遷」、2日目は「木造芝居小屋の音響特性」というテーマです。当日会場には、200名定員数を超える聴講者が集まり、大変な盛況でした。

当日発表に使用した建築音響技術の変遷の資料を下記に記しておきます。この年表は、まだまだ不十分なものであり、随時追加訂正を行っていければと思っております。この年表を作成するに当り、たくさんの音響の専門家の方々からご指導いただき、大変感謝しております。また芝居小屋の音響特性の内容につきましては8/20付けブログで記しておりますが、詳しい分析結果はまた別の機会に記したいと考えています。

発表資料(建築音響学年表)はこちらからダウンロード

発表原稿はこちら

日本建築学会2007年度九州大会

日本建築学会2007年度九州大会が、福岡大学七隈キャンパスで、8月29日(水)~31日(金)まで開かれました。私は、ちょうどインターノイズ2007と日程が重なってしまいましたので、残念ながら直接足を運ぶことはできませんでしたが、弊社が共同執筆をいたしました「ボイドスラブの減衰定数」というタイトルの論文を、日本カイザーの堀内さんが、最終日に発表されました。なお同様のテーマで、さらに推敲した原稿が建築学会の技術報告集に採用され、12月号に掲載予定となっています。

2007/09/04

インターノイズ2007 イスタンブールに参加しました

インターノイズ2007(The 36th International Congress & Exhibition on Noise Control Engineering )が トルコのイスタンブールで、8月28日から31日まで開かれました。講演者は530名、ポスター発表は60名で、私はポスター発表を8月29日10:00から16時まで行いました。発表のテーマは「インパクトボールの衝撃による、ボイドスラブの振動評価V値の推定」というものです。インパクトボールの落下による衝撃力は力積が推定できることを示し、歩行実験の応答加速度から歩行の力積を、ボール落下の力積と応答加速度の関係から導いています。ボール落下の力積と応答加速度はかなり線形性が見られるが、反発係数は多少非線形の傾向があり、力積を推定するために、反発係数の非線形性を取り込んでいます。ボイドスラブを評価するためには、ボールを落下高さ1.0mから実際のスラブに落下させ、その振動応答加速度と周波数をもとめ、構造計算規準に示されている歩行の力積2.94N・secとボール落下1mの力積とを比較して、歩行の応答加速度を推定し、振動評価を行う方法を示しました。


会場の前にて


発表の様子

以下、発表したポスターです。








ポスターをPDFでダウンロード

2007/08/20

ライブ カンボジアの天使が舞い降りるJAPAN TOUR Vol.3を見て

 8/19(日)14:30~18:30まで、カンボジアの天使が舞い降りるJAPAN TOUR Vol.3のライブが、日暮里サニーホールでありました。主催はNGO MAKE THE HEAVEN、弊社はこの企画に対し、日暮里サニーホールを紹介して協力させていただきました。
 このカンボジアの子供たち25名は、NCCLAという孤児院にいて、孤児院の御父さんが経営しているイタリアレストランで民族舞踊を披露して、食費や学 費を作り出しています。その子供たちをNGOが招待して、日本で公演をしました。今回が3回目です。子供たちの踊りはなんとも輝いていて、皆エンターテ ナーで、衣装も素晴らしく、感動いたしました。そのほかに、障害者のパーカッションバンド、ディジュリドウ奏者、ギター演奏などがあり、またお客さんも一 緒になって全員で踊ったりもしました。







 客席の半分は段床になっていますが、半分は平土間のままで椅子がなく、観客はそこに座って見ていました。そのようにすることで、出演者の子供たちが、 座っている観客の中に入り込んできたり、客席で踊りを踊ったりすることが出来るようになり、固定された椅子の場合とはまったく違った演出が出来るのだと感 心しました。NGO MAKE THE HEAVENの代表は軌保博光氏あらため「てんつくマン」といい、吉本興業にもいた芸人で、カンボジアの支援(学校つくり、井戸掘り、地雷撤去など)と地 球環境問題にたいして行動している活動家、最近では地球温暖化対策のためのチラシを3000万枚配ったことでも知られています。今日はとにかくカンボジア の子供たちと彼からエネルギーを頂いた感じがしています。今日に続き、岐阜の各務原、福岡市、香川の小豆島(NGOの本拠地)で、公演があるそうです。成 功をお祈りいたします。また日暮里サニーホールには共催をしていただき、いろいろ便宜を図っていただき、大変感謝している次第です。

木造芝居小屋の音響測定

日本の伝統芸能を育んできた木造芝居小屋と、現代の多目的劇場の音響測定を行い、木造芝居小屋の音響的特徴を確認するための音響実験を行いました。

測 定を行った木造芝居小屋は岐阜県にある4座で、鳳凰座、白雲座、常盤座、明治座です。測定は8月1日、2日に行いました。多目的劇場のサンプルは横浜市 磯子区民センターの杉田劇場で、測定は7月15日に行いました。測定項目は、残響時間、音圧分布、インパルス応答。無響室録音した浄瑠璃常磐津三味線と ヴァイオリンの音楽を、明治座と杉田劇場でそれぞれ計測したインパルス応答に畳み込み、あたかもその場所で演奏したような音を作り出し、耳で比較して確認 します。なお杉田劇場(音響反射板設置状況)の残響時間は1.42秒/500Hz空席、中津川市明治座は0.59秒/500Hz空席でした。


■鳳凰座


■白雲座



■常盤座


■明治座


以上の写真撮影:永石 秀彦氏

■杉田劇場




測定は神奈川大学建築学科寺尾研究室、JATET木造劇場研究会、芝居小屋・大向こうの会(全国芝居小屋連絡協議会会員)の3団体の共催で行われました。
測定に当っては次の方々に大変御世話になりました。記して感謝の意を表します。
測 定をしていただいた神奈川大学寺尾研究室の関根助手、4年生の高見鉄兵氏、浄瑠璃常磐津を無響室で謡っていただいた鈴木和英太夫(鈴木英一氏)、三味線 の菊与志郎(柴田 満氏)、無響室録音データを提供していただいた東急建設 、測定場所を提供していただいた杉田劇場の館長 中村牧氏、鳳凰座・白雲座の 2座は中川ひとみ氏(下呂市教育委員会・社会教育課)、常盤座は吉村和昌氏(中津川市福岡総合事務所 文化スポーツ課)、明治座は今井康二氏(中津川市加 子母総合事務所 文化スポーツ課)、段取りと測定風景写真の撮影をしていただいたカメラマンの永石秀彦氏(芝居小屋・大向こうの会)。

な おこの分析結果は、JATETフォーラム2007(9/4、9/5)で発表する予定です。場所は日本大学理工学部1号館6階CSTホール(千代田区神田 駿河台1-8-14)で行われます。申し込みは劇場演出空間技術協会(JATET) TEL:03-5289-8858、FAX:03-3258- 2400、E-mail:info@jatet.or.jp で出来ます。お知らせまで。またJATETフォーラムについては、URL:http: //www.jatet.or.jp/で、ご覧になれます。

2007/06/19

橋本典久 著『近所がうるさい!騒音トラブルの恐怖』 

 著者は、床衝撃音の予測法を開発していたことで有名な音響技術者です。この本では、1974年に起こった有名なピアノ殺人事件など、近隣騒音を原因とす る殺人事件や傷害事件の多数の例を示し、事件までの過程を細かく紹介し、その原因の検証を行っている。現状ではその対策方法は極めて難しいと述べている。
  事 件を起こすような人の多くは、日常的に外部に心を閉ざしていて、騒音の加害者(騒音発生者)が自分を攻撃している、ないし嫌がらせされているといった妄 想を懐くようになり、ついには事件を引き起こす。しかし、事件を引き起こさないまでも、騒音被害者は攻撃されているといった妄想を抱く段階に至っている状 況も多く、その多くの場合、騒音加害者側が被害者側に対して思いやりが不足している。昔のように地域のコミュニケーションが存在していれば、解決までいか なくとも、御互いが遠慮しあうこともある。近隣騒音の問題は、音の大小より心理的な問題が大きく、コミュニケーションが存在しない場合には、近隣騒音の問 題は攻撃的な性格を帯びるようになる、という。被害者も、音に囚われてしまっている状態であることを冷静になって考えてみる必要がある。騒音対策技術で は、効果に限界がある。また役所の環境課や、裁判でもほとんど解決不能である。他人の騒音を許さない社会を目指す限り、騒音事件は増える一方である。日本 人は音に対して従来は寛容な民族であったのだから、昔に戻って、音がうるさいのはお互い様、という社会をつくってゆかねばならないと述べています。もちろ ん著者は、音の大きさが問題となっている騒音と、近隣騒音のような心理的要素によりうるさいと感じる煩音を分けて考え、単にうるさくてもガマンしろと言っ ているわけではありません。筆者は『最後に、騒音事件のない社会の実現を願ってあえて言いたい。“音がうるさくて何が悪い”』と締めくくっています。
 
  こ の本の内容は、スリラー小説よりもぞっとするし、不安感も懐かせるものです。われわれ音響技術者は、技術的面から生活環境の快適性を向上させていく責務 があります。特に集合住宅の音環境は重要な問題です。しかし、生活者としては地域のコミュニケーションが機能している社会を目指すべきだと思います。例 えば、ヨーロッパの音楽を含む芸能文化はその一翼を担えるのではと思います。芸術は個人の思いを他の人たちと共有化することですが、それを地域的なもの として発展させることです。昔からある地域の御祭りはその機能を持つ典型的な文化です。劇場も地域文化を支える拠点になればいいと願っています。



『近所がうるさい!騒音トラブルの恐怖』
八戸工業大学大学院教授橋本典久 著 
発行所 KKベストセラーズ2006年7月発行 819円

2007/06/11

和太鼓「鼓遊」のコンサート

 6/10(日)和太鼓「鼓遊」のコンサートが稲城市の駒沢学園記念大講堂でありました。
 
 「鼓遊」は、稲城市を拠点とする和太鼓のグループで、この会を率いている、頭の木崎さんは普段は酒屋さんを本業としていらっしゃいますが、稲城市地域社会の文化・芸術の発展向上と共に次世代を担う子供達の心の健全育成を目的に活動されています。

  この日、大講堂は満席となり、すばらしい演奏を見せてくれました。第二部には障害者グループの「友遊クラブ」の演奏もありました。木崎さんは最後の挨拶 で、小学生や中学生がたくさん来てくれたことへの感謝と、太鼓を若い人に広げるのが夢だといっていました。地域のコミュニティーがほとんど無くなってし まっていることから、このような活動は非常に重要なことだと思います。鼓遊のグループは、ほとんどが女性で、男の子が少ないのは残念です。

  鼓遊とは、練習所の音の問題の相談を受けたことで知り合いました。和太鼓の一般への浸透は歓迎すべきことですが、その音の大きさでは近隣問題になる可能 性もあります。和太鼓の音は一般的にはお祭りがイメージされますが、しかしその感じ方は人によって異なります。騒音と認識されるかどうかは、地域コミュニ ティーがしっかりとしているかどうかによっても、影響を受けます。

神奈川大学吹奏楽部2007サマーコンサート

 6/8(金)横浜みなとみらいホールで、神奈川大学吹奏楽部のコンサートがありました。非常勤講師として教えている神奈川大学建築学部の学生にも、吹奏楽部の学生がおり、練習を見させてもらったこともあります。

 前半は寺井尚行作曲 『ウインドオーケストラのための「時間が空間を舞う(ときがそらをまう)」』、福島弘和作曲 『アイヌ民謡「イヨマンテ」の主題に よる変奏曲』、2007年度全日本吹奏楽コンクール課題曲より、真島俊夫作曲 『鳳凰が舞う-印象、京都 石庭 金閣寺』で、後半はヨハン・セバスチャ ン・バッハ作曲『トッカータとフーガ ニ短調BWV565』、クロード・ドビュッシー作曲『喜びの島』、モーリス・ラヴェル作曲『「スペイン狂詩曲」より 祭り』、ジョルジュ・ビゼー作曲『「アルルの女」第2組曲より第4曲ファランドール』、アンコール曲はアラビア風の『ナジムアラビーノ』、『美空ひばりメ ドレー』、『星条旗よ永遠なれ』。

 前半は日本人の作曲者の作品で、最初の「時間が空間を舞う(ときがそらをまう)」』の「時間(とき)」は朱鷺を表現しており、たくさんの朱鷺が空を舞っ ている様子を感じさせる雄大なものでした。日本人の作曲者のものはコンサートでは、あまり聴く機会がありませんが、吹奏楽器とハープやコントラバス、打楽 器、和太鼓などがとても豊かな音を出し、演奏も力強くすばらしかったです。「鳳凰が舞う」は、実物の笹を舞台で揺らして、風で葉がそよぐ感じを表現した り、獅子脅しのような音、フルートによる篠笛のような音もあり、非常に臨場感があり印象的でした。毎年のように金賞を得ている神奈川大学の吹奏楽部の実力 を感じました。

数年前に、知人でもあるKinbo Ishii-Etoが指 揮するベートーベンの「田園」を聞いたときに、出だしの音が野原を吹き渡る春風のように聞こえたことがあります(この話はKinboに楽屋まで行って伝え ましたら、喜んでいました)。Kinboは音の効果のために、楽器の並べ方を工夫しているそうです。例えば、コントラバスは一般的には上手側に固まってい ることが多いですが、横一列に並べるなど、演奏の効果をより発揮できるレイアウトに、曲ごとに柔軟に変えていきます。また、今年の1月に山本寛斎演出の 「太陽の船」というイベントを東京ドームに見に行った際、300台の和太鼓の生演奏では、波のように音が動く、生き生きとした臨場感を感じました。

 コンサートでは楽器の位置から音が聞こえることと、その音を効果的に表現することは芸術的な表現内容を広げ、臨場感が増すため、非常に重要なことと考えています。

2007/05/21

アンサンブルウイーンの演奏

 5/12(日)に杉田劇場で開催されたアンサンブルウイーンのコンサートに行きました。この杉田劇場は2004年竣工し、音響設計をYABが担当したものです。
  アンサンブルウィーンはウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・ホーネックの異編成カルテットで、ウィーンでは大変人気があります。2年前に も同じこの劇場でコンサートを行い、音楽は文字通り楽しむものということを教えてくれました。構成はヴァイオリン2名、ビオラ、コントラバスの計4名の弦 楽四重奏団です。チェロでなくコントラバスというのが特徴です。19世紀ウィーンのヨハン・シュトラウスの時代も、チェロでなく、コントラバスだったそう です。リズムがはっきりして、音の幅がひろがり、豊かな音の感じになります。前回はヨハン・シュトラウスのものが多かったと思いますが、今回はさらにモー ツアルトと、その同時代のワルツの作曲家ランナーのものでした。第一ヴァイオリンのライナー・ホーネックの音は跳ねるようなわくわくするようなものでし た。杉田劇場は、名前は劇場ですが、コンサートにも非常に向いているホールです。とくに響きが必要な弦楽器に対しても艶のある響きを生み出すことができ、 今回もそのよい響きを感じることができました。

ENTRACT新サロンホールでの2回目のコンサート

 少し前の話になりますが、4/29(日)ACT環境計画の事務所でのサロンコンサートを聴きに行きました。
 事務所移転後2回目のコンサートとなります。
1回目の様子については、こちら
 今回は、小川典子さんのピアノ演奏で、曲目はドビュッシーの12の練習曲、武満徹の閉じた眼Ⅱ 雨の樹素描 雨の樹素描Ⅱ、プロコフィエフ ピアノソナタ 第7番 変ロ長調作品83です。
 ドビュッシーの練習曲は音が立体的に構成されていて、音の空間がイメージできるようなものです。ホールはかなり響きのある空間のため、こういったピアノ の大きな音がにごらないか多少心配をしていましたが、40名ほどの満員の観客によって吸音の効果もあったのか、小川さんの演奏は、はっきりとした力強いす ばらしい音で響いていました。ピアニストで、ドビュッシー研究家である青柳さんもいらしていましたが、小川さんの演奏はすばらしく、ホールの響きもよいと おっしゃっていました。

2007/05/11

日刊建設産業新聞に記事が掲載されました

5/10発行の日刊建設産業新聞に、YABの執筆した記事が掲載されました。
江尻建築構造設計事務所の江尻氏との共同執筆によるものです。
タイトル「床スラブの軽量化と遮音性向上の両立」

集合住宅における苦情の大部分を占める床衝撃音の問題と、
スラブの軽量化を 遮音の側面から検討しました。

クリックで大きな画像が表示されます↓

2007/05/10

旧金毘羅大芝居金丸座第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居公演

日本最古の芝居小屋(天保6年(1835年)に建設)として国の重要文化財として指定されている旧金毘羅大芝居金丸座に、建築家の賀古氏のお誘いをいただき、芝居小屋会議、歌舞伎学会、JATET(劇場演出空間技術協会)のメンバーと行ってまいりました。


旧金毘羅大芝居金丸座


 この金丸座は、昭和51年に移築に伴う大改修を行った後、平成14年以降に耐震改修に伴って、江戸時代の当初の状態に復元されています。それを「平成の大改修」と言い、設計を担当されたのが賀古氏です。

 その復元で、江戸時代の芝居空間の素晴らしさがわかる大発見がありました。特にすばらしいのは、舞台空間と客席空間が一体で連続していることです。

ま ずプロセニアムがなく、舞台からは本花道と上手側に仮花道があり、さらに本花道の上に「かけすじ」すなわち、宙乗り用のレールがあります。また、舞台か ら客席空間まで、天井はすのこで出来ており、どこからでも雪や木の葉を降らせることが出来、天井裏が演出空間となっていることです。さらに、廻り舞台や すっぽん、暗転用の蔀戸のようなものや、雨戸のようなものもあります。

客席は桝席になっており、コノ字型に2階の桟敷席もあります。桝席 には仕切 りがありますが、この仕切りがあることで、たくさんの人が座っていても、客席か ら仕切りの上を歩いて出入りが出来るので、よく考えられていると思います。このように舞台と客席が渾然一体となって、芸能空間を生き生きさせていることが 特徴です。

 この3月に、市川団十郎氏がパリオペラ座に行って公演をされました。朝日新聞に掲載されていた市川海老蔵氏の談話によると、客席と舞台が遠く感じたとのこと。
  歌 舞伎では、下手側に太鼓や笛、上手側に浄瑠璃と三味線といった形で演者を取り囲むように演奏者が存在し、オペラ座のように俳優と観客の間に演奏者が存在 するということはありません。また俳優も、舞台、花道、仮花道、さらに宙乗りといった形で、様々な方角から音を発します。このことにより、観客と舞台が一 体となった感じになります。

 木造芝居小屋の音響的特徴は残響感がないことです。床が畳、天井は竹のすのこ、壁は障子ですから、吸音する 材料ばかり です。とくに低音域の音は吸音されて しまい、したがって明瞭性があります。そのため、残響感を管楽器自身でつけたり、声も長く伸ばしながら話すといったことが、歌舞伎らしさを形作っていま す。また、音が反射音で補強されにくいため大きな声を出す必要があること、さらに直接音がはっきりしていて、音の方向感があることも特徴で、したがって音が立体的 になります。

桝席

かけすじ(布で覆われている部分)

桟敷席(明かりとりは、障子の外の蔀戸が閉められている。)


客席上のぶどう棚


 第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居は4月12日から25日まであり、演目は、

午前の部 1.正札附根元草摺、2.芦屋道満大内鑑 葛の葉(中村扇雀) 3.英執着獅子 
午後の部 1.傾城反魂香、2.ご挨拶(坂田藤十郎)、3.男女道成寺

 私は4月24日に午前の部を鑑賞しました。
午前の部では、葛の葉が圧巻でした。「陰陽師・安倍晴明出生にまつわる伝説を題材とした作品で、人間と狐の異類婚姻を描いた代表的な作品です。」(サイトより)) ストーリーは不思議な昔話ですが、なんとも美しいものでした。廻り舞台や、すっぽんを使って舞台転換をし、主人公の葛の葉が障子に墨で遺言を書くところな ど も素晴らしく、また人間の姿が次第に狐に変身していきながら、「かけすじ」を使って宙を飛んでいくところがとくに圧巻でした。

2007/05/07

木造賃貸アパートの床衝撃音

某木造賃貸アパートの設計にあたり、設計者の方から床衝撃音についてご相談をいただき、対策を行い、先日竣工後測定を行った。
木造アパートの床衝 撃音の音響性能の目指すところは、住宅性能表示制度上の最低ランクの相当スラブ厚11cm(ばらつきを考慮したLH-65に相当)であ る。しかしこの最低ランクを一般の木造アパートで実現することは非常に難しく、木造アパートでは住宅性能表示制度で評価された例はほとんどないと考えられ る。この制度において、相当スラブ厚11cmの床構造の「みなし仕様」の例は、例えば、床側はフローリング16mm以下、モルタル厚35mm以上、パー ティクルボード厚15mmを2枚、天井側は、床と別構造で、天井を支持し、石膏ボード12.5mmを2枚張るといった重量のある仕様である。これに対し本 物件は、床はフローリング15mm、アスファルト系制振材厚8mm、ベニア厚28mmを井桁に組んだ大引の上に配置、天井は床とは別構造で、石膏ボード 12.5mmを2枚張りとなっている。これは一般的な木造アパートよりも相当重量床衝撃音対策を施した仕様であるが、それでも竣工後の2室の重量床衝撃音 の測定結果は、それぞれLH-70とLH-75となり、LH-65には今一歩必要であった。みなし仕様と比較して面密度が小さいため、目標性能には到達が 難しいことが予想できるが、面密度をこれ以上増すことは構造的にも不利であるため、なんとか床剛性を上げたり、床面で音が発生しにくい方法などで工夫をす る必要がある。
いずれにしても、木造賃貸アパートだから音響性能はどうでもいいということではなく、出来る限り性能を向上させる努力が必要と感じ ている。また本建物の大 きな特徴は、南側は大きな窓と玄関扉があるため耐震壁が設けられず、この南側だけは特殊な木造ラーメン構造となっている。平井設計工房が開発した、この新 しい工法を用いることで、壁の無い開放感のある木造の建物の設計も可能となる。

設計:平井設計工房、施工:東聖ハウスシステム

2007/04/10

新建築2007年4月号、建築家山﨑泰孝氏のコラム


新建築2007年4月号、建築家山﨑泰孝氏のコラム
「現代の木造芝居小屋を ~劇場空間演出技術協会木造劇場ワーキングの活動~」
の中で、YAB代表藪下の木造芝居小屋の音響特性についての意見を紹介していただきました。

山 﨑氏は、最近の公共施設の独立法人化や指定管理者制度により日本のアートの商業化が進み、アメリカ型に硬直化することを危惧しています。そこで、明治近 代化以前にあった独自の文化や芸術をもう一度見直して今後の芸術、文化を創造すべきであり、「劇場建築」もこうした視点で木造の芝居小屋の原点に返り「日 本固有の劇場空間」を考えたい、といった意見を述べられています。


今年1月の木造劇場研究会に参加した際のブログはこちら
昨年11月に全国芝居小屋会議に出席した際のブログはこちら(1)(2)

2007/04/03

横浜神代神楽の公演

41日(土)、神代神楽公演会横浜市歴史博物館でありました。

また神楽師たちの近世・近代と題して、企画展も開かれています。こちらは33日から415日までとなっています。

公演は午前11時より、港北神代神楽 佐相秀行社中による「稲荷山」、1300より子安神代神楽 横越政義社中による「神逐蓑笠」、1430より市場神代郷神楽 萩原諄夫社中による「八雲神詠」です。

今はあまり神楽を見ることがなくなりましたが、横浜の神楽は江戸時代までさかのぼることが出来るようです。市場村萩原家文書「御神用控帳」の文政5年(1822年)の記録では、神楽奉納場所と神楽師の出所が書かれており、神楽師の出所は、わが事務所の所在する荏田村(現在は荏田町)、上小田中村、下小田中村(武蔵小杉あたり)、川崎宿が載っています。現在残っている神楽師は、先ほど公演した3社中と、先代まで続いた荏田の斉藤家だったようです。斉藤家は代々、剣神社の宮司を勤めていた家系です。剣神社はYABの事務所のすぐ近くにあります。斉藤家の奉納範囲は相当広く、横浜市の都築区、青葉区、緑区、港北区だけでなく、南多摩、町田、川崎にも及んだそうです。文政2年の記録によれば、萩原氏の奉納のスケジュールはほぼ毎日、また多い日には12箇所以上の奉納があったようです。江戸時代の祭礼の活発な様子がうかがい知れます。神楽は収穫を神様に祈ることが主の目的のために、飢饉のときはいつも以上に神楽が豊作祈願として行われたようです。

江 戸時代には神楽師が自由に演目を選べたようですが、明治政府は神道を国の宗教と定め、神代神楽は国民教化の手段となり、神道独特の歴史観のみの公演が許さ れるようになり、楽しい部分や批判的な内容は禁じられてしまったそうです。明治の終わり、また大正時代には神楽師たちは神楽だけでなく、歌舞伎芝居も演じ るようになり、芝居も盛んに行われるようになったとのことです。この辺のところは芝居小屋の歴史と重なるところです。

  企画展示には衣装や面、大太 鼓、小太鼓、締太鼓、能管や、昨晩ボートシアターの花見で聞いた篠笛が展示されていました。それを覗き込んだところ、ガラスに頭をぶつけてしまいまし た…。それをきっかけに、隣にいた年配の女性が話かけて来られ、ショーケースの中の篠笛を吹いている男性の写真を指して、「私の孫です」とのこと。さきほ ど見た舞台で篠笛を吹いていた人でした。ちょうどボートシアターの人から、篠笛は毎日練習が必要だと昨日聞いたばかりだったこともあり、練習が大変だそう ですねといった話をしました。彼は音大を卒業したばかりだそうで、今後この神楽を展開できるよう彼に期待したいと思います。

公 演が行われた講堂は、響きが強すぎるために物語を説明する声がよく伝わってきませんでした。昔、実際に神楽が行われた場所は、神社の神楽殿(能舞台のよう な格好)であり、舞台だけ屋根があるか、仮設の掛け舞台に、やはり舞台だけ屋根があるもので、半屋外空間です。声はほとんど響くことがなく、能管や篠笛の 甲高い音には響かない空間のほうがきれいな音になるのではと思います。残念ながら、そのような場所が今はほとんどなくなりました。

大岡川桜祭りにて、横浜ボートシアター演奏会

 3月31日18時から、桜木町の大岡川の桜まつりに合わせて、横浜ボートシアターに よる演奏会が開催されました。今年の桜は地球温暖化の影響か、開花日が定まらず心配していましたが、ちょうど満開の日の開催となりました。幸い、直前に 降っていた雨も、演奏が始まる頃にはどうにか止んでいました。ボートシアターは大岡川に舟を浮かべて演奏します。特徴あるインドネシアのガムランのような 楽器を使ったゆったりとした音楽で、和楽器の篠笛(横笛)が入っています。桜の花の下のゆったりとした音楽には、幽玄の雰囲気がありました。
桜祭りには屋台もあり、たくさんの人々もそぞろ歩いていて、お客さんのリクエストで「さくら」を演奏したりしていました。篠笛の「さくら」もとても良いものでした。

 大岡川は、護岸がコンクリートで垂直に立ち上がっているので、演奏者にはエコーが感じられ演奏しにくいこともありそうですが、聞いている方は、その壁が結構音を反射していて直接音を補強しており、拡声しているのかと思うほど、川に沿って音が遠くまで伝搬していました。
 ボートシアターのこのような催物は、ほぼ年に1回(無いときもある)ですが、ふねの演奏会は、道行く多くの人が聴くことが出来、川を楽しむすばらしい方法であると感じました。

2007/03/26

「火山の王宮」~象を殺した者 横浜ボートシアター公演~

2007年3月24日14:00~ 横浜レンガ倉庫1号館ホールにて観劇しました。

 この公演は、「みなとYOKOHAM演劇祭‘07」の参加作品として上演されたものであり、また横浜ボートシアターの劇団創立25周年記念作品です。
火山の王宮」は、インドネシア在住のフランス人作家E・プラセトヨの小説が原作ストーリー。命の大切さと命あるものへのいとおしさを共有することがテーマとして描かれています。台本作成が2006年のジャワ地震と重なり、犠牲者への追悼の意も表されていました。
物語は、噴火するジャワの火山調査に行った日本人の女性火山学者が出合った、現地の象と英雄に関する神話世界中心に構成されています。
そ の神話世界と、ドキュメンタリー風のストーリーが融合した構成が、幻想的世界をあたかも現実の世界のように表現されていました。舞台の装置は単純な白い 布のスクリーンだけで、そこにジャワの風景が映し出され、またインドネシア独特の影絵のスクリーンにもなり、また変形して、山小屋や、頂上の観測所にもな るものでした。幕間がなく、次から次へと場所が変化していくことに自然に対応していました。

 今回の公演は、みなとみらいのレンガ倉庫の劇場でしたが、本来ならば、ボートシアターの拠点である「ふね劇場」での公演が実現できればよかったのではと思います。海に浮かぶふねでは自然を感じ、今回のような環境との共生のテーマには特にふさわしい空間であると思います。
「ふ ね劇場」は、一代目の木造のはしけの劇場が老朽化で沈船したのが1995年、二代目の鉄のはしけは賛同者の田中さんに寄付され、さらに多くの方の寄付 のおかげで、劇場として造作されており、一度だけ2001年に創立20周年記念公演として「王サルヨの婚礼」が横浜トリエンナーレ参加作品として上演され ました。しかしその後は山下埠頭のはしけだまりに係留されていますが、公演には制限がありなかなかできません。今後のふね劇場での公演が待たれます。

2007/03/19

『平家物語ヲ語る、読む、弾ク』

3/17、後藤浩吉(琵琶弾き語り)、高橋和久(朗読、元横浜ボートシアター)による、『平家物語ヲ語る、読む、弾ク』を観に行きました。
会場のBar TAMAGO(JR四谷駅から歩いて7分)は、大きな空間ではありませんが、お客さんは30名ほど、会場は一杯でした(テレビでよく拝見する方もいらしていました)。また、平家物語を題材としている作品にもかかわらず、20歳代と思われる人が大部分でした。

ストーリーは壇ノ浦から始まり、先帝御入水、木曾義仲の最後となります。
後藤さんの弾き語りの、胸に響くびりついた音と悲しい物語の謡、そして高橋さんの地から搾り出して湧き出るような朗読は、「もののあはれ」を感じさせ、立体的な物語の劇空間を作り出しました。日常から離れられることも、劇空間の一つの役割です。

後藤さんは、最近CDアルバム『田舎人のうた』をリリースされました。録音は音楽バー「国境の南」という場所で録音されたとのことです。響きに関して言え ば、日本の楽器には日本の本来の空間(木造など響きが少ない空間)が合うと思っています。ヨーロッパの弦楽器は、目一杯響く空間でないと豊かな艶のある響 きが得られませんが、日本の楽器、琵琶や三味線はそのものが響きを持っており、響かない空間にあっていると思います。後藤さんは熊本出身だそうなので、私 は、昨年行った熊本の芝居小屋「八千代座」は響きも含めて日本の芸能空間そのものなので、次回はぜひそこで録音してみてくださいとお伝えしました。

なお、たまたま翌18日(日)にNHK教育テレビ「まつりの響き 第7回地域伝統芸能まつり」を見始めましたら、のっけに平家琵琶「先帝御入水」から始まりました。昨日聞いたばかりで、不思議な縁だと思いました。

2007/03/05

ACT環境計画移転後の初めてのEntracteコンサート

ACT環境計画の事務所が、桜木町から自由が丘に移転され、従来から行われていた35回目のentracteコンサートが新事務所にて3月4日に初めて開かれました。この事務所にはサロンコンサートホールが併設されており、YABがその音響設計を担当させていただきました。

演奏は、チェロは金木博幸さん、ピアノは森知英さん。
曲目はバッハの無伴奏チェロ組曲第一番と5番のプレリュード、プロコフィエフのチェロソナタ ハ長調、ショスタコーヴィッチのチェロソナタニ短調、アンコール曲としてラフマニノフのチェロソナタ2曲が演奏されました。
音響設計を担当したものとしては、チェロの音がどう鳴るかが大変気になるところでしたが、最初の一音からとても艶のあるよい響きを感じました。ピアノは最初の一音、二音が少し響きすぎの印象がありましたが、後はとても美しい音色であったと思います。

2 層吹き抜けの空間に建築材料としての吸音材は一切なく、上部の壁面にある本箱のみが多少吸音している状態で、大変よく響く空間となっています。また響き をやわらかくするために、平行壁面をなくしており、弦楽器をよく響かせようと意図して設計したことは成功していたように思います。演奏も大変すばらしく、 いいコンサートでした。
今後の企画にも期待したいと思います。




ACT環境計画
http://www.actplanning.jp/

シンポジウム『何を「学力」と呼ぶのか』~教育の演劇に対するコミットから問う~に参加しました

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[開催概要]
シンポジウム『何を「学力」と呼ぶのか』~教育の演劇に対するコミットから問う~

主催:横浜市高等学校演劇連盟・横浜ふね劇場を作る会
後援:神奈川県教育委員会・横浜市教育委員会
場所:横浜市市民活動支援センター(みなとみらい地区)
日時:2007年3月3日(土)14時から17時
パネリスト:下山田伸一郎氏(県教育委員会)、篠原久美子氏(劇作家)、中嶋英樹氏(荒川区民会館サンパール荒川企画運営)、中野敦之氏(横浜国立大学修士課程、劇団唐ゼミ★代表)古谷泰三氏(光陵高校教諭)
司会:久世公孝氏(桜陽高校教諭)
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このシンポジウムは、学校の授業に「総合的な学習の時間」が設けられることがきっかけとなり2000年にスタートしたもので、『教育に演劇を取り入れるには』ということを主旨として開催されています。私も「ふね劇場を作る会」のメンバーとして参加しています。

ど のように教育の中に演劇を取り入れたらよいかを毎回試行錯誤し、これまでのシンポジウムでは、「芸術教育か、コミュニケーション教育か」「社会的実用性 を求めるものか、人間関係形成を求めるものか」「演劇で教えるのか、演劇を教えるのか」等、演劇と教育の厳密な定義のようなことも話されてきました。

今回のシンポジウムでは、教育の演劇へのコミットは何のために行われているのか、行われるべきなのか、をテーマとして開催されました。
パネリストからは、授業に演劇を取り入れてきた経験や、その実践の結果が報告され、実際にたくさんの演劇人が非常勤講師として学校の中に入っていって教えていることがわかりました。
い ま、神奈川では県立高校の12校で、28科目に演劇手法を取り入れ、学校設定科目として開講されているとのことです。また、県立高校では152校中86 校に演劇部があるそうです。演劇は、自己表現が出来るようになるこということもありますが、それ以上に、相手の話が聞けるようになること、さらに相手を思 いやる能力をつけることが出来るという効果があるそうです。その結果、授業にも身が入り学力も向上したと話されていました。
昨今、地域の共同体が弱体化してきていることで、学校の持つ役割が大きくなっているという認識があります。
演 劇人が学校の中に入っていくことは生徒にとって刺激になり、すばらしいことですが、さらに、学校側がもっと地域の劇場を利用していくといいのではと思い ます。生徒にとって劇場や舞台での経験は大きな刺激になり、また劇場が地域の共同体形成の一翼を担うことが出来るのではと思います。


※お知らせ。
この3月はみなと横浜演劇祭が開催予定で、横浜ボートシアターも参加をしています。遠藤啄郎の新作で、劇団25周年記念講演でもあります。題は『火山の王宮』、2007年3月16日から18日まで両国のシアターχで、また3月21日から24日は横浜赤レンガ倉庫で行われます。
興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。

2007/02/26

フジクラ楽器店新店舗完成

埼玉県熊谷市のフジクラ楽器店の移転新築にあたって、音響設計と音響工事監理を担当しました。フジクラ楽器店は、店舗に音楽スタジオを併設し、ピアノやドラム、大正琴の教室を開催しています。
計画から始まって1年強、この2月に新店舗が竣工しました。3月から営業開始予定です。
音響設計の概要を下記に記します。

建物概要
1F:楽器店の店舗および倉庫
2F:大正琴教室、ピアノ・フルート教室、ドラム室(1)、ドラム室(2)の音楽室4室
3F:楽器店オーナーの住居
なお敷地には10台ほど入れる駐車場がある。

音響設計
音 楽スタジオは全て浮き構造とし、スタジオ間の遮音性能および練習室と上階の住宅間の遮音性能を十分確保した。竣工後の音響測定の結果、スタジオ間はDr -80、練習室と上階住宅はDr-70~75と十分な性能が得られた。住宅の床の寝室はコンクリートスラブの上にさらに浮き床を設けて、壁には胴縁工法で PBを仕上げ、遮音性能を向上させた。残響時間の測定結果から平均吸音率を求めたが、ドラム室α=0.35、ピアノ室α=0.25~0.3大正琴の教室α=0.3~0.35と音楽にあわせて室ごとに吸音率も異なり、音楽の練習には適切な空間となっている。

フ ジクラ楽器店の特徴は、「地域の音楽文化振興発展」をモットーに音楽教室を開いていることです。特に大正琴教室は大変人気があるそうです。この部屋は 50㎡ほどの広さがあり、南に向かって窓が開いている明るいスタジオです。ここでは今後ライブコンサートの開催も検討されているようです。















ドラム室(1)















大正琴教室















外観(上階が大正琴教室)


フジクラ楽器店 新店舗住所:埼玉県熊谷市石原3丁目199-1
http://www.fujikura-gakki.com/

設計・施工:小沢工業株式会社
設備設計:有限会社クラフト設備設計
音響設計・音響工事監理・音響工事指導:有限会社YAB建築・音響設計

2007/01/31

第25回 環境振動シンポジウム

1月23日(火)、第25回 環境振動シンポジウムが建築学会環境工学委員会の主催で開催されました。

テーマ「環境振動の性能設計はどこまで可能か」

今回のシンポジウムで発表されたのは以下の内容です。
日 本大学の冨田隆太氏による「床振動測定用標準衝撃源としてのインパクトボールの有用性」、ハーフPCaボイドスラブ協議会の佐藤眞一郎氏による「ボイド 合成床板の振動測定」、間組の田中靖彦氏による「エアロビクスによる床振動とその対策事例」、フジタの中山昌尚氏による「工場地帯における外部振動による 床振動とその対策」、金沢大学の梶川康男氏による「歩道橋の振動と性能設計」、三菱重工業の柳和久氏による「客船の防振に関する性能設計事例」

弊 社は、佐藤眞一郎氏の発表のうち、振動測定および分析を担当いたしました。ボイド合成床板の振動測定は、インパクトボールや歩行による加振をボイドスラ ブに与え、その振動測定結果から、固有振動数や加速度振幅値による建築学会の振動指針による評価結果などを示し、今後の設計指針の方向を示したものです。

以下、その他の発表の内容を簡単に。
柳 氏の発表は、客船の防振事例は、116.000総トンの大型客船Diamond Princessの起振源であるプロペラや発電機の振動低減と、それによる船全体の振動応答解析を行うなど、かなり大掛かりな設計例によるものでした。梶 川氏の発表は、歩道橋の防振設計はいかに歩行による2Hzの振動を避けて設計するかといった内容。中山氏の発表は、工場の振動対策はTMDによる例が、ま た田中氏の発表は、エアロビクスによる振動については構造補強を行ったこと、およびエアロビクスの加振力を想定したことなど。冨田氏の発表では、床の振動 性能を評価するためには標準的な加振源が必要であり、それはインパクトボールが好ましいということ。

スラブの環境振動の観点からの設計法は、今後さらに研究が必要だと思います。
シンポジウムの最後には、濱本先生が環境振動設計法小委員会を立ち上げるとおっしゃっていました。

2007/01/30

建築評価勉強会で講演いたしました

江尻建築構造設計事務所の江尻さんが主催している、建築評価勉強会(2007年1月25日開催)に呼ばれ、音と集合住宅に関する講演をしました。
勉強会のテーマは二つ有り、ひとつは「CASBEE(建築物総合環境評価システム)について」で、財団法人建築環境・省エネルギー機構の宮内氏の講演、もう1つは「集合住宅の音環境」で私の講演です。
聴衆は30名弱、構造技術者、材料メーカー、意匠設計事務所の方々などでした。
宮内氏の講演では、CASBEEを用いて評価された建物には、自治体が容積率を緩和したり、総合設計制度適用許可をする例があるとのことで、興味深いものでした。また、音に関する評価値もあり、それは住宅性能表示制度との関係がどのようになっているのか、気になります。
私の方は、集合住宅において、音に関する目標値の設定や、そのための設計法などを説明させていただきました。また、住宅購入者と住宅の設計者や販売者との期待のすれ違いが、トラブルの元になることなどを実例を交えながら報告しました。
音 に関する数値目標の設定には、住宅性能表示制度はとてもいい制度ではありますが、しかし使い勝手の悪さもあり、現在はほとんどこの制度は使われていないよ うです。住宅供給者もメーカーも努力し、購入者への説明をきちんとできるよう、住宅性能表示制度を利用していくべきではないかと思います。

炎とフラメンコ

「炎とフラメンコ」と題して、小松原庸子スペイン舞踊団新春公演が国立劇場小劇場で1月9日、10日、11日とありました。その最終日に劇場に行くと、ぎりぎり最後の1枚の当日券が手に入りました。
演 目は二部編成で、前半は浄瑠璃常磐津をバックにフラメンコを踊るという異色作で、テーマは炎とフラメンコ、後半は一般的なフラメンコで、テーマはセビー ジャの夜のパティオでした。「炎とフラメンコ」は愛知万博のオープニングに依頼を受け創作され、日本・スペインの各方面から賞賛を受けた作品とのこと。
小 松原庸子さんは、代々、常磐津の師匠という家系に生まれたそうで、常磐津はその背景で身に付いたものだそうです。踊り手は、女性は上半身が着物、下半身は フラメンコのスカート、男性は着物と袴という衣装です。衣装も驚きですが、笛や小鼓、三味線の音楽、さらに常磐津の声をバックに、そのリズムに合わせてフ ラメンコを踊るということはかなり実験的な試みだと思いました。しかし、違和感はあまりありませんでした。後半の、情熱的なフラメンコとは違い、常磐津 バックのフラメンコは優しい柔らかな感じです。フラメンコも常磐津もそれぞれの国の古い文化ですが、異なる文化を活かしながら融合させることもこれからの 試みなのでしょう。
そういえば、YABが支援している劇団「横浜ボートシアター」も、アジアの芸能(音楽や物語)を取り入れた興味深い演劇だと改めて思いました。もっとも、アジアの文化のほうが日本には近く、馴染みやすいものと思いますが。

2007/01/11

六本木サロンコンサートホール

六本木ヒルズより首都高をはさんだ真向かい、リニューアルされた六本木シーボンビルの8階にサロンコンサートホール(設計:ACT環境計画、音響設計:YAB建築・音響設計)が竣工しました(12/14)。
施主は同ビルに歯科を開業されている方で、その他内科の診療所もある診療所群の中にこのホールはあります。
通常は、講演会などに使用されることを目的としていますが、クラシックコンサートなども行う計画です。その場合は、外部の騒音を遮断することが必要であり、浮き構造を採用しました。もちろん内部で発生した音が他の室内に伝搬しない様にする目的もあります。
こ のビルは既存の事務所ビルであり、しかもテナントビルのために、コンクリートの浮き床とはせずに、乾式浮き床工法を用いました。重量は約 100kg/m2。その浮き床の上に壁(スーパーハードボード12.5mm)を2枚、天井は同仕様のものをスラブから防振吊りしました。床面積は廊下状の 部分を含めると約40m2、舞台・客席の部分は約35m2です。客席数は約35席です。天井は鋸歯状で、壁も拡散形状をしています。講演には残響が短いほ うがよく、クラシックコンサートには豊かな響きが必要のために、収納の中を吸音にして、扉を開け閉めすることで調整することとしました。竣工時の測定で は、残響時間は500Hzで0.83秒(空席)、収納の扉を開けると0.65秒(空席)に変化します。平均吸音率はα=0.13、収納の扉を開けるとα= 0.16に変化します。コンサートで満席の時には平均吸音率はα=0.16程度と推定され、ライブなホールです。しかし空席時(扉を閉めた状態)でも音声 明瞭度指数RASTIは0.64、IECスケールでGOODに評価され、講演にも問題がないと考えられます。



2007/01/09

京都にて木造劇場研究会に参加

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年末慌しく、更新することができませんでしたが、12月に京都にて木造劇場研究会に参加いたしました。

劇 場演出空間技術協会(JATET)の木造劇場研究会のメンバーの一人が、京都南座で12月に行われる顔見世興行に出演することになりました。その鑑賞を 含めて12月9日、木造劇場研究会が、関西の研究者や学生も含めて京都の円山公園の一角にある歴史ある和風旅館「吉水」にて開かれました。











旅館「吉水」

研 究会では、日本の伝統芸能の特徴について、音と劇場空間についてなどが話されました。例えば、三味線をビビらせながら弾く音のこと、拍子をずらして間を盗 んで弾いたり叩いたりするほうが格好良いこと、最近は俳優が和服を自分で着られなかったり、日本間が少なくなってきたことによって座れないといったことで 作法も基本から指導する必要があることなど。

夕方、京都南座にて「吉例顔見世興行および中村勘三郎襲名披露」を観劇しました。16時から21時まで5時間の長丁場です。

南座は、昔は桟敷席には椅子が無く芝居小屋のように畳に上に座ってみる形だったそうですが、現在はかなり窮屈ではありますが椅子が設置されています。出し物は江戸の風情そのもので、親しみ深く、長時間にもかかわらず案外楽しんで見ることができました。

芝 居小屋もそうですが、南座は客席がコの字型で、何層にわたり、壁に張り付いていて、賑わいの雰囲気を作っています。清水裕之のいう第3の視軸です。国立 劇場もそうですが、近代劇場の設計の考え方は、舞台と客席の2元的な考え方で設計されています。単なる大きな側壁は、桟敷席のある劇場と比較して、舞台と 客席が切り離された感じになります。馬蹄形のオペラ劇場のように、客席が何層にも積み重なって華やいだ雰囲気は、歌舞伎劇場と似た客席構成のような気がし ました。





















翌12月10日は、大江能楽堂で大江定期能を1時から5時まで見ました。大江能楽堂は、能舞台を木造の建物で覆ったもので、外光も入ってくる能劇場です。

この能劇場は、昭和20年8月、戦争中に延焼を防ぐ目的で解体を命ぜられ、8月15日までには能舞台を残して解体し、8月15日いよいよ舞台を解体するときになって、終戦を迎え、幸運にも能舞台は残ったものです。
客 席には椅子は無く、芝居小屋と同じように、畳の上の桝の中に座る形になっています。声は明瞭に力強く、客席のほうへはっきりと伝搬してきていました。舞台 の背中には松が描かれている鏡板があり、また舞台を見て右側、脇側には舞台を覆う建物の壁があり、鏡板と脇の壁からの初期反射音が直接音を補強すること で、明瞭な音が伝搬してきているものと思いました。また床は畳、天井は薄い天井板で出来ており、壁も板ふすまなので、残響感がほとんどありません。能で用 いる笛の、にごった強い衝撃音のような音色は、豊かな残響があるところには合わないような気がします。
この大江能楽堂の作りは、一般の劇場の音響にも参考になるのではないかと思いました。































公 演後に、大江能楽堂の大江又三郎さんに、この能楽堂の説明をしていただきました。その中で、「舞台の下には壺が埋まっていて、その効果は舞台下の空間を広 げ、舞台の足音の響きをよくするためのもの」と説明されていました。私は常々、この舞台の下の壺は舞台の床の響きを吸音して抑えるためのものではないかと 思っており、その話をしましたら、大江さんにはなんと賛同していただけまし た。実験で確かめたわけではないので単なる仮説ですが、いつか実験して確認したいと思います。
実験は、2006年9月に建築学会大会で発表した集合住宅の床の振動実験法で可能であると思います。