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2007/01/31

第25回 環境振動シンポジウム

1月23日(火)、第25回 環境振動シンポジウムが建築学会環境工学委員会の主催で開催されました。

テーマ「環境振動の性能設計はどこまで可能か」

今回のシンポジウムで発表されたのは以下の内容です。
日 本大学の冨田隆太氏による「床振動測定用標準衝撃源としてのインパクトボールの有用性」、ハーフPCaボイドスラブ協議会の佐藤眞一郎氏による「ボイド 合成床板の振動測定」、間組の田中靖彦氏による「エアロビクスによる床振動とその対策事例」、フジタの中山昌尚氏による「工場地帯における外部振動による 床振動とその対策」、金沢大学の梶川康男氏による「歩道橋の振動と性能設計」、三菱重工業の柳和久氏による「客船の防振に関する性能設計事例」

弊 社は、佐藤眞一郎氏の発表のうち、振動測定および分析を担当いたしました。ボイド合成床板の振動測定は、インパクトボールや歩行による加振をボイドスラ ブに与え、その振動測定結果から、固有振動数や加速度振幅値による建築学会の振動指針による評価結果などを示し、今後の設計指針の方向を示したものです。

以下、その他の発表の内容を簡単に。
柳 氏の発表は、客船の防振事例は、116.000総トンの大型客船Diamond Princessの起振源であるプロペラや発電機の振動低減と、それによる船全体の振動応答解析を行うなど、かなり大掛かりな設計例によるものでした。梶 川氏の発表は、歩道橋の防振設計はいかに歩行による2Hzの振動を避けて設計するかといった内容。中山氏の発表は、工場の振動対策はTMDによる例が、ま た田中氏の発表は、エアロビクスによる振動については構造補強を行ったこと、およびエアロビクスの加振力を想定したことなど。冨田氏の発表では、床の振動 性能を評価するためには標準的な加振源が必要であり、それはインパクトボールが好ましいということ。

スラブの環境振動の観点からの設計法は、今後さらに研究が必要だと思います。
シンポジウムの最後には、濱本先生が環境振動設計法小委員会を立ち上げるとおっしゃっていました。

2007/01/30

建築評価勉強会で講演いたしました

江尻建築構造設計事務所の江尻さんが主催している、建築評価勉強会(2007年1月25日開催)に呼ばれ、音と集合住宅に関する講演をしました。
勉強会のテーマは二つ有り、ひとつは「CASBEE(建築物総合環境評価システム)について」で、財団法人建築環境・省エネルギー機構の宮内氏の講演、もう1つは「集合住宅の音環境」で私の講演です。
聴衆は30名弱、構造技術者、材料メーカー、意匠設計事務所の方々などでした。
宮内氏の講演では、CASBEEを用いて評価された建物には、自治体が容積率を緩和したり、総合設計制度適用許可をする例があるとのことで、興味深いものでした。また、音に関する評価値もあり、それは住宅性能表示制度との関係がどのようになっているのか、気になります。
私の方は、集合住宅において、音に関する目標値の設定や、そのための設計法などを説明させていただきました。また、住宅購入者と住宅の設計者や販売者との期待のすれ違いが、トラブルの元になることなどを実例を交えながら報告しました。
音 に関する数値目標の設定には、住宅性能表示制度はとてもいい制度ではありますが、しかし使い勝手の悪さもあり、現在はほとんどこの制度は使われていないよ うです。住宅供給者もメーカーも努力し、購入者への説明をきちんとできるよう、住宅性能表示制度を利用していくべきではないかと思います。

炎とフラメンコ

「炎とフラメンコ」と題して、小松原庸子スペイン舞踊団新春公演が国立劇場小劇場で1月9日、10日、11日とありました。その最終日に劇場に行くと、ぎりぎり最後の1枚の当日券が手に入りました。
演 目は二部編成で、前半は浄瑠璃常磐津をバックにフラメンコを踊るという異色作で、テーマは炎とフラメンコ、後半は一般的なフラメンコで、テーマはセビー ジャの夜のパティオでした。「炎とフラメンコ」は愛知万博のオープニングに依頼を受け創作され、日本・スペインの各方面から賞賛を受けた作品とのこと。
小 松原庸子さんは、代々、常磐津の師匠という家系に生まれたそうで、常磐津はその背景で身に付いたものだそうです。踊り手は、女性は上半身が着物、下半身は フラメンコのスカート、男性は着物と袴という衣装です。衣装も驚きですが、笛や小鼓、三味線の音楽、さらに常磐津の声をバックに、そのリズムに合わせてフ ラメンコを踊るということはかなり実験的な試みだと思いました。しかし、違和感はあまりありませんでした。後半の、情熱的なフラメンコとは違い、常磐津 バックのフラメンコは優しい柔らかな感じです。フラメンコも常磐津もそれぞれの国の古い文化ですが、異なる文化を活かしながら融合させることもこれからの 試みなのでしょう。
そういえば、YABが支援している劇団「横浜ボートシアター」も、アジアの芸能(音楽や物語)を取り入れた興味深い演劇だと改めて思いました。もっとも、アジアの文化のほうが日本には近く、馴染みやすいものと思いますが。

2007/01/11

六本木サロンコンサートホール

六本木ヒルズより首都高をはさんだ真向かい、リニューアルされた六本木シーボンビルの8階にサロンコンサートホール(設計:ACT環境計画、音響設計:YAB建築・音響設計)が竣工しました(12/14)。
施主は同ビルに歯科を開業されている方で、その他内科の診療所もある診療所群の中にこのホールはあります。
通常は、講演会などに使用されることを目的としていますが、クラシックコンサートなども行う計画です。その場合は、外部の騒音を遮断することが必要であり、浮き構造を採用しました。もちろん内部で発生した音が他の室内に伝搬しない様にする目的もあります。
こ のビルは既存の事務所ビルであり、しかもテナントビルのために、コンクリートの浮き床とはせずに、乾式浮き床工法を用いました。重量は約 100kg/m2。その浮き床の上に壁(スーパーハードボード12.5mm)を2枚、天井は同仕様のものをスラブから防振吊りしました。床面積は廊下状の 部分を含めると約40m2、舞台・客席の部分は約35m2です。客席数は約35席です。天井は鋸歯状で、壁も拡散形状をしています。講演には残響が短いほ うがよく、クラシックコンサートには豊かな響きが必要のために、収納の中を吸音にして、扉を開け閉めすることで調整することとしました。竣工時の測定で は、残響時間は500Hzで0.83秒(空席)、収納の扉を開けると0.65秒(空席)に変化します。平均吸音率はα=0.13、収納の扉を開けるとα= 0.16に変化します。コンサートで満席の時には平均吸音率はα=0.16程度と推定され、ライブなホールです。しかし空席時(扉を閉めた状態)でも音声 明瞭度指数RASTIは0.64、IECスケールでGOODに評価され、講演にも問題がないと考えられます。



2007/01/09

京都にて木造劇場研究会に参加

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年末慌しく、更新することができませんでしたが、12月に京都にて木造劇場研究会に参加いたしました。

劇 場演出空間技術協会(JATET)の木造劇場研究会のメンバーの一人が、京都南座で12月に行われる顔見世興行に出演することになりました。その鑑賞を 含めて12月9日、木造劇場研究会が、関西の研究者や学生も含めて京都の円山公園の一角にある歴史ある和風旅館「吉水」にて開かれました。











旅館「吉水」

研 究会では、日本の伝統芸能の特徴について、音と劇場空間についてなどが話されました。例えば、三味線をビビらせながら弾く音のこと、拍子をずらして間を盗 んで弾いたり叩いたりするほうが格好良いこと、最近は俳優が和服を自分で着られなかったり、日本間が少なくなってきたことによって座れないといったことで 作法も基本から指導する必要があることなど。

夕方、京都南座にて「吉例顔見世興行および中村勘三郎襲名披露」を観劇しました。16時から21時まで5時間の長丁場です。

南座は、昔は桟敷席には椅子が無く芝居小屋のように畳に上に座ってみる形だったそうですが、現在はかなり窮屈ではありますが椅子が設置されています。出し物は江戸の風情そのもので、親しみ深く、長時間にもかかわらず案外楽しんで見ることができました。

芝 居小屋もそうですが、南座は客席がコの字型で、何層にわたり、壁に張り付いていて、賑わいの雰囲気を作っています。清水裕之のいう第3の視軸です。国立 劇場もそうですが、近代劇場の設計の考え方は、舞台と客席の2元的な考え方で設計されています。単なる大きな側壁は、桟敷席のある劇場と比較して、舞台と 客席が切り離された感じになります。馬蹄形のオペラ劇場のように、客席が何層にも積み重なって華やいだ雰囲気は、歌舞伎劇場と似た客席構成のような気がし ました。





















翌12月10日は、大江能楽堂で大江定期能を1時から5時まで見ました。大江能楽堂は、能舞台を木造の建物で覆ったもので、外光も入ってくる能劇場です。

この能劇場は、昭和20年8月、戦争中に延焼を防ぐ目的で解体を命ぜられ、8月15日までには能舞台を残して解体し、8月15日いよいよ舞台を解体するときになって、終戦を迎え、幸運にも能舞台は残ったものです。
客 席には椅子は無く、芝居小屋と同じように、畳の上の桝の中に座る形になっています。声は明瞭に力強く、客席のほうへはっきりと伝搬してきていました。舞台 の背中には松が描かれている鏡板があり、また舞台を見て右側、脇側には舞台を覆う建物の壁があり、鏡板と脇の壁からの初期反射音が直接音を補強すること で、明瞭な音が伝搬してきているものと思いました。また床は畳、天井は薄い天井板で出来ており、壁も板ふすまなので、残響感がほとんどありません。能で用 いる笛の、にごった強い衝撃音のような音色は、豊かな残響があるところには合わないような気がします。
この大江能楽堂の作りは、一般の劇場の音響にも参考になるのではないかと思いました。































公 演後に、大江能楽堂の大江又三郎さんに、この能楽堂の説明をしていただきました。その中で、「舞台の下には壺が埋まっていて、その効果は舞台下の空間を広 げ、舞台の足音の響きをよくするためのもの」と説明されていました。私は常々、この舞台の下の壺は舞台の床の響きを吸音して抑えるためのものではないかと 思っており、その話をしましたら、大江さんにはなんと賛同していただけまし た。実験で確かめたわけではないので単なる仮説ですが、いつか実験して確認したいと思います。
実験は、2006年9月に建築学会大会で発表した集合住宅の床の振動実験法で可能であると思います。