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2007/03/26

「火山の王宮」~象を殺した者 横浜ボートシアター公演~

2007年3月24日14:00~ 横浜レンガ倉庫1号館ホールにて観劇しました。

 この公演は、「みなとYOKOHAM演劇祭‘07」の参加作品として上演されたものであり、また横浜ボートシアターの劇団創立25周年記念作品です。
火山の王宮」は、インドネシア在住のフランス人作家E・プラセトヨの小説が原作ストーリー。命の大切さと命あるものへのいとおしさを共有することがテーマとして描かれています。台本作成が2006年のジャワ地震と重なり、犠牲者への追悼の意も表されていました。
物語は、噴火するジャワの火山調査に行った日本人の女性火山学者が出合った、現地の象と英雄に関する神話世界中心に構成されています。
そ の神話世界と、ドキュメンタリー風のストーリーが融合した構成が、幻想的世界をあたかも現実の世界のように表現されていました。舞台の装置は単純な白い 布のスクリーンだけで、そこにジャワの風景が映し出され、またインドネシア独特の影絵のスクリーンにもなり、また変形して、山小屋や、頂上の観測所にもな るものでした。幕間がなく、次から次へと場所が変化していくことに自然に対応していました。

 今回の公演は、みなとみらいのレンガ倉庫の劇場でしたが、本来ならば、ボートシアターの拠点である「ふね劇場」での公演が実現できればよかったのではと思います。海に浮かぶふねでは自然を感じ、今回のような環境との共生のテーマには特にふさわしい空間であると思います。
「ふ ね劇場」は、一代目の木造のはしけの劇場が老朽化で沈船したのが1995年、二代目の鉄のはしけは賛同者の田中さんに寄付され、さらに多くの方の寄付 のおかげで、劇場として造作されており、一度だけ2001年に創立20周年記念公演として「王サルヨの婚礼」が横浜トリエンナーレ参加作品として上演され ました。しかしその後は山下埠頭のはしけだまりに係留されていますが、公演には制限がありなかなかできません。今後のふね劇場での公演が待たれます。

2007/03/19

『平家物語ヲ語る、読む、弾ク』

3/17、後藤浩吉(琵琶弾き語り)、高橋和久(朗読、元横浜ボートシアター)による、『平家物語ヲ語る、読む、弾ク』を観に行きました。
会場のBar TAMAGO(JR四谷駅から歩いて7分)は、大きな空間ではありませんが、お客さんは30名ほど、会場は一杯でした(テレビでよく拝見する方もいらしていました)。また、平家物語を題材としている作品にもかかわらず、20歳代と思われる人が大部分でした。

ストーリーは壇ノ浦から始まり、先帝御入水、木曾義仲の最後となります。
後藤さんの弾き語りの、胸に響くびりついた音と悲しい物語の謡、そして高橋さんの地から搾り出して湧き出るような朗読は、「もののあはれ」を感じさせ、立体的な物語の劇空間を作り出しました。日常から離れられることも、劇空間の一つの役割です。

後藤さんは、最近CDアルバム『田舎人のうた』をリリースされました。録音は音楽バー「国境の南」という場所で録音されたとのことです。響きに関して言え ば、日本の楽器には日本の本来の空間(木造など響きが少ない空間)が合うと思っています。ヨーロッパの弦楽器は、目一杯響く空間でないと豊かな艶のある響 きが得られませんが、日本の楽器、琵琶や三味線はそのものが響きを持っており、響かない空間にあっていると思います。後藤さんは熊本出身だそうなので、私 は、昨年行った熊本の芝居小屋「八千代座」は響きも含めて日本の芸能空間そのものなので、次回はぜひそこで録音してみてくださいとお伝えしました。

なお、たまたま翌18日(日)にNHK教育テレビ「まつりの響き 第7回地域伝統芸能まつり」を見始めましたら、のっけに平家琵琶「先帝御入水」から始まりました。昨日聞いたばかりで、不思議な縁だと思いました。

2007/03/05

ACT環境計画移転後の初めてのEntracteコンサート

ACT環境計画の事務所が、桜木町から自由が丘に移転され、従来から行われていた35回目のentracteコンサートが新事務所にて3月4日に初めて開かれました。この事務所にはサロンコンサートホールが併設されており、YABがその音響設計を担当させていただきました。

演奏は、チェロは金木博幸さん、ピアノは森知英さん。
曲目はバッハの無伴奏チェロ組曲第一番と5番のプレリュード、プロコフィエフのチェロソナタ ハ長調、ショスタコーヴィッチのチェロソナタニ短調、アンコール曲としてラフマニノフのチェロソナタ2曲が演奏されました。
音響設計を担当したものとしては、チェロの音がどう鳴るかが大変気になるところでしたが、最初の一音からとても艶のあるよい響きを感じました。ピアノは最初の一音、二音が少し響きすぎの印象がありましたが、後はとても美しい音色であったと思います。

2 層吹き抜けの空間に建築材料としての吸音材は一切なく、上部の壁面にある本箱のみが多少吸音している状態で、大変よく響く空間となっています。また響き をやわらかくするために、平行壁面をなくしており、弦楽器をよく響かせようと意図して設計したことは成功していたように思います。演奏も大変すばらしく、 いいコンサートでした。
今後の企画にも期待したいと思います。




ACT環境計画
http://www.actplanning.jp/

シンポジウム『何を「学力」と呼ぶのか』~教育の演劇に対するコミットから問う~に参加しました

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[開催概要]
シンポジウム『何を「学力」と呼ぶのか』~教育の演劇に対するコミットから問う~

主催:横浜市高等学校演劇連盟・横浜ふね劇場を作る会
後援:神奈川県教育委員会・横浜市教育委員会
場所:横浜市市民活動支援センター(みなとみらい地区)
日時:2007年3月3日(土)14時から17時
パネリスト:下山田伸一郎氏(県教育委員会)、篠原久美子氏(劇作家)、中嶋英樹氏(荒川区民会館サンパール荒川企画運営)、中野敦之氏(横浜国立大学修士課程、劇団唐ゼミ★代表)古谷泰三氏(光陵高校教諭)
司会:久世公孝氏(桜陽高校教諭)
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このシンポジウムは、学校の授業に「総合的な学習の時間」が設けられることがきっかけとなり2000年にスタートしたもので、『教育に演劇を取り入れるには』ということを主旨として開催されています。私も「ふね劇場を作る会」のメンバーとして参加しています。

ど のように教育の中に演劇を取り入れたらよいかを毎回試行錯誤し、これまでのシンポジウムでは、「芸術教育か、コミュニケーション教育か」「社会的実用性 を求めるものか、人間関係形成を求めるものか」「演劇で教えるのか、演劇を教えるのか」等、演劇と教育の厳密な定義のようなことも話されてきました。

今回のシンポジウムでは、教育の演劇へのコミットは何のために行われているのか、行われるべきなのか、をテーマとして開催されました。
パネリストからは、授業に演劇を取り入れてきた経験や、その実践の結果が報告され、実際にたくさんの演劇人が非常勤講師として学校の中に入っていって教えていることがわかりました。
い ま、神奈川では県立高校の12校で、28科目に演劇手法を取り入れ、学校設定科目として開講されているとのことです。また、県立高校では152校中86 校に演劇部があるそうです。演劇は、自己表現が出来るようになるこということもありますが、それ以上に、相手の話が聞けるようになること、さらに相手を思 いやる能力をつけることが出来るという効果があるそうです。その結果、授業にも身が入り学力も向上したと話されていました。
昨今、地域の共同体が弱体化してきていることで、学校の持つ役割が大きくなっているという認識があります。
演 劇人が学校の中に入っていくことは生徒にとって刺激になり、すばらしいことですが、さらに、学校側がもっと地域の劇場を利用していくといいのではと思い ます。生徒にとって劇場や舞台での経験は大きな刺激になり、また劇場が地域の共同体形成の一翼を担うことが出来るのではと思います。


※お知らせ。
この3月はみなと横浜演劇祭が開催予定で、横浜ボートシアターも参加をしています。遠藤啄郎の新作で、劇団25周年記念講演でもあります。題は『火山の王宮』、2007年3月16日から18日まで両国のシアターχで、また3月21日から24日は横浜赤レンガ倉庫で行われます。
興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。