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2007/05/21

アンサンブルウイーンの演奏

 5/12(日)に杉田劇場で開催されたアンサンブルウイーンのコンサートに行きました。この杉田劇場は2004年竣工し、音響設計をYABが担当したものです。
  アンサンブルウィーンはウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・ホーネックの異編成カルテットで、ウィーンでは大変人気があります。2年前に も同じこの劇場でコンサートを行い、音楽は文字通り楽しむものということを教えてくれました。構成はヴァイオリン2名、ビオラ、コントラバスの計4名の弦 楽四重奏団です。チェロでなくコントラバスというのが特徴です。19世紀ウィーンのヨハン・シュトラウスの時代も、チェロでなく、コントラバスだったそう です。リズムがはっきりして、音の幅がひろがり、豊かな音の感じになります。前回はヨハン・シュトラウスのものが多かったと思いますが、今回はさらにモー ツアルトと、その同時代のワルツの作曲家ランナーのものでした。第一ヴァイオリンのライナー・ホーネックの音は跳ねるようなわくわくするようなものでし た。杉田劇場は、名前は劇場ですが、コンサートにも非常に向いているホールです。とくに響きが必要な弦楽器に対しても艶のある響きを生み出すことができ、 今回もそのよい響きを感じることができました。

ENTRACT新サロンホールでの2回目のコンサート

 少し前の話になりますが、4/29(日)ACT環境計画の事務所でのサロンコンサートを聴きに行きました。
 事務所移転後2回目のコンサートとなります。
1回目の様子については、こちら
 今回は、小川典子さんのピアノ演奏で、曲目はドビュッシーの12の練習曲、武満徹の閉じた眼Ⅱ 雨の樹素描 雨の樹素描Ⅱ、プロコフィエフ ピアノソナタ 第7番 変ロ長調作品83です。
 ドビュッシーの練習曲は音が立体的に構成されていて、音の空間がイメージできるようなものです。ホールはかなり響きのある空間のため、こういったピアノ の大きな音がにごらないか多少心配をしていましたが、40名ほどの満員の観客によって吸音の効果もあったのか、小川さんの演奏は、はっきりとした力強いす ばらしい音で響いていました。ピアニストで、ドビュッシー研究家である青柳さんもいらしていましたが、小川さんの演奏はすばらしく、ホールの響きもよいと おっしゃっていました。

2007/05/11

日刊建設産業新聞に記事が掲載されました

5/10発行の日刊建設産業新聞に、YABの執筆した記事が掲載されました。
江尻建築構造設計事務所の江尻氏との共同執筆によるものです。
タイトル「床スラブの軽量化と遮音性向上の両立」

集合住宅における苦情の大部分を占める床衝撃音の問題と、
スラブの軽量化を 遮音の側面から検討しました。

クリックで大きな画像が表示されます↓

2007/05/10

旧金毘羅大芝居金丸座第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居公演

日本最古の芝居小屋(天保6年(1835年)に建設)として国の重要文化財として指定されている旧金毘羅大芝居金丸座に、建築家の賀古氏のお誘いをいただき、芝居小屋会議、歌舞伎学会、JATET(劇場演出空間技術協会)のメンバーと行ってまいりました。


旧金毘羅大芝居金丸座


 この金丸座は、昭和51年に移築に伴う大改修を行った後、平成14年以降に耐震改修に伴って、江戸時代の当初の状態に復元されています。それを「平成の大改修」と言い、設計を担当されたのが賀古氏です。

 その復元で、江戸時代の芝居空間の素晴らしさがわかる大発見がありました。特にすばらしいのは、舞台空間と客席空間が一体で連続していることです。

ま ずプロセニアムがなく、舞台からは本花道と上手側に仮花道があり、さらに本花道の上に「かけすじ」すなわち、宙乗り用のレールがあります。また、舞台か ら客席空間まで、天井はすのこで出来ており、どこからでも雪や木の葉を降らせることが出来、天井裏が演出空間となっていることです。さらに、廻り舞台や すっぽん、暗転用の蔀戸のようなものや、雨戸のようなものもあります。

客席は桝席になっており、コノ字型に2階の桟敷席もあります。桝席 には仕切 りがありますが、この仕切りがあることで、たくさんの人が座っていても、客席か ら仕切りの上を歩いて出入りが出来るので、よく考えられていると思います。このように舞台と客席が渾然一体となって、芸能空間を生き生きさせていることが 特徴です。

 この3月に、市川団十郎氏がパリオペラ座に行って公演をされました。朝日新聞に掲載されていた市川海老蔵氏の談話によると、客席と舞台が遠く感じたとのこと。
  歌 舞伎では、下手側に太鼓や笛、上手側に浄瑠璃と三味線といった形で演者を取り囲むように演奏者が存在し、オペラ座のように俳優と観客の間に演奏者が存在 するということはありません。また俳優も、舞台、花道、仮花道、さらに宙乗りといった形で、様々な方角から音を発します。このことにより、観客と舞台が一 体となった感じになります。

 木造芝居小屋の音響的特徴は残響感がないことです。床が畳、天井は竹のすのこ、壁は障子ですから、吸音する 材料ばかり です。とくに低音域の音は吸音されて しまい、したがって明瞭性があります。そのため、残響感を管楽器自身でつけたり、声も長く伸ばしながら話すといったことが、歌舞伎らしさを形作っていま す。また、音が反射音で補強されにくいため大きな声を出す必要があること、さらに直接音がはっきりしていて、音の方向感があることも特徴で、したがって音が立体的 になります。

桝席

かけすじ(布で覆われている部分)

桟敷席(明かりとりは、障子の外の蔀戸が閉められている。)


客席上のぶどう棚


 第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居は4月12日から25日まであり、演目は、

午前の部 1.正札附根元草摺、2.芦屋道満大内鑑 葛の葉(中村扇雀) 3.英執着獅子 
午後の部 1.傾城反魂香、2.ご挨拶(坂田藤十郎)、3.男女道成寺

 私は4月24日に午前の部を鑑賞しました。
午前の部では、葛の葉が圧巻でした。「陰陽師・安倍晴明出生にまつわる伝説を題材とした作品で、人間と狐の異類婚姻を描いた代表的な作品です。」(サイトより)) ストーリーは不思議な昔話ですが、なんとも美しいものでした。廻り舞台や、すっぽんを使って舞台転換をし、主人公の葛の葉が障子に墨で遺言を書くところな ど も素晴らしく、また人間の姿が次第に狐に変身していきながら、「かけすじ」を使って宙を飛んでいくところがとくに圧巻でした。

2007/05/07

木造賃貸アパートの床衝撃音

某木造賃貸アパートの設計にあたり、設計者の方から床衝撃音についてご相談をいただき、対策を行い、先日竣工後測定を行った。
木造アパートの床衝 撃音の音響性能の目指すところは、住宅性能表示制度上の最低ランクの相当スラブ厚11cm(ばらつきを考慮したLH-65に相当)であ る。しかしこの最低ランクを一般の木造アパートで実現することは非常に難しく、木造アパートでは住宅性能表示制度で評価された例はほとんどないと考えられ る。この制度において、相当スラブ厚11cmの床構造の「みなし仕様」の例は、例えば、床側はフローリング16mm以下、モルタル厚35mm以上、パー ティクルボード厚15mmを2枚、天井側は、床と別構造で、天井を支持し、石膏ボード12.5mmを2枚張るといった重量のある仕様である。これに対し本 物件は、床はフローリング15mm、アスファルト系制振材厚8mm、ベニア厚28mmを井桁に組んだ大引の上に配置、天井は床とは別構造で、石膏ボード 12.5mmを2枚張りとなっている。これは一般的な木造アパートよりも相当重量床衝撃音対策を施した仕様であるが、それでも竣工後の2室の重量床衝撃音 の測定結果は、それぞれLH-70とLH-75となり、LH-65には今一歩必要であった。みなし仕様と比較して面密度が小さいため、目標性能には到達が 難しいことが予想できるが、面密度をこれ以上増すことは構造的にも不利であるため、なんとか床剛性を上げたり、床面で音が発生しにくい方法などで工夫をす る必要がある。
いずれにしても、木造賃貸アパートだから音響性能はどうでもいいということではなく、出来る限り性能を向上させる努力が必要と感じ ている。また本建物の大 きな特徴は、南側は大きな窓と玄関扉があるため耐震壁が設けられず、この南側だけは特殊な木造ラーメン構造となっている。平井設計工房が開発した、この新 しい工法を用いることで、壁の無い開放感のある木造の建物の設計も可能となる。

設計:平井設計工房、施工:東聖ハウスシステム