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2013/08/19

ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラ サマー・コンサート2013


84日(日)1400、ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラ サマー・コンサートが、新しく改装された東京芸術劇場コンサートホールで開かれ、行ってきました。

本コンサートのパンフレットの巻頭に、オーケストラ代表の小林裕一氏が書いています。
『キンボー先生がジュニア・フィルの役割を強く意識してくださっているのが、器楽の演奏家だけでなく、オーケストラの活動を様々な方面から支える人たちを育てること。』その効果か、観客は老若男女さまざまで、また10代の若い人もたくさんいらっしゃいます。それだけで会場が明るくなる気がします。

コンサート前半は、モーツアルト/歌劇「フィガロの結婚」、後半はラフマニノフ/「交響的舞曲」、前半は、演出 菅尾 友、指揮 川瀬賢太郎、清水醍輝、ドタバタ劇の筋をキンボー・イシイ=エトーがくだけた調子で説明して始まります。オーケストラを前と後ろに分け、その間にスペースを作り、歌手がそこで演技をします。大道具はないのですが、あるときは演奏者が壁をつくり、それを衣装部屋の壁に見立てます。

後半は、趣のまったく違うラフマニノフの「交響的舞曲」(1940年)で、指揮はキンボーさんです。
全編にわたって激しい感情と穏やかな感情が繰り返し現れます。穏やかな時はとても美しい旋律です。第一楽章には、激しい動きのある曲の後に木管のオーボエとクラリネットとオーケストラには珍しいアルトサックスの、まるで朝に小鳥が鳴き交うような、きれいな旋律が出てきます。アルトサックスの音は大変柔らかな丸みを帯びた音で、演奏が終わった後、キンボーさんは何度かサックス奏者を立たせて、拍手をしていました。
大きなスケールで、これぞ交響曲と言った感じの曲ですが、よくこの難しい曲を若い人たちが頑張ったと思います。また聴きたいと思いました。

演奏終了後、キンボーさんの楽屋に行き、挨拶して、ちょっと質問をしました。昔オペラ座にオーケストラピットがなかった時は、どこで演奏したのだろうかと聞きましたら、「きっと舞台の上だと思う。舞台の奥にオーケストラ(楽団)がいても演奏はできる」と仰っていました。
オーケストラピットの位置は、とても機能的な位置ではあるのですが、舞台と観客を分断してしまいます。1600年に作曲された現存する最古のオペラ「エウリディーチェ」から1637年のサンカシアーノ歌劇場までは、オーケストラ(楽団)が舞台の前に居たわけではありません。それから現在まで、紆余曲折はあるでしょうが、オーケストラピットが様々な工夫をもって発展してきています。


また、出雲阿国が1603年に北野天満宮で歌舞伎踊りを行って以来、歌舞伎は発展してきましたが、昨日(8/16)のテレビ(にっぽんの芸能「追憶 市川團十郎 中村勘三郎」)の解説者の説明では、花道は1733年の市村座の絵図に初めて出てくるようです。最初は能舞台のように花道はなく、花道の発明までに、約100年かかっているとのこと。この花道によって舞台と観客席が一体になれると説明されていました。この歌舞伎の観点から見るとオペラのオーケストラピットは違和感があります。ときどき歌手が観客席まででてきて歌うことを夢想してしまいます。

2013/08/08

ASANO TAIKO U.S. 和太鼓スタジオがロサンゼルス南のトーランス市にオープン

ロサンゼルスの南、トーランス市に和太鼓のスタジオがオープンしました。
浅野太鼓のブログより

YABは、このスタジオの音響設計を担当させていただきました。オープンのイベントに合わせて私も渡米し、竣工直前に現場の確認および遮音の測定を行いました。


7月23日に現地到着、24日に大太鼓を使って遮音測定を行いました。遮音性能は問題なく安心しました。訴訟社会でもあるアメリカでは音の問題も非常に気をつかいます。

遮音測定の様子

ASANO TAIKO U.S.スタッフの皆さん

25日の午前は、神主による竣工式および夜はオープニングパーティがあり、26日はいよいよスタジオでの練習が始まります。ワークショップでは、鼓童の藤本吉利さんが指導して、20名が同時に大太鼓をたたく場面があります。この時が、ほぼ最大音圧が発生すると想定して、近隣に伝搬していないか再度チェックをしました。敷地境界周辺では全く太鼓の音は聞こえず、目標を達成することができました。本地域の騒音規制法の規制値は、日本の工業地域に相当し、衝撃音の場合には昼65dB、夜60dBと緩いのですが、隣接してホテルや事務所があり、道路を隔てて住宅街が広がっています。

太鼓連盟会長(左)と藤本さんの共演

20名同時演奏

ここで素晴らしい出会いもありました。
ホテルのフロントでペットボトルの水を買おうとしたところ、日系人の一団のチェックインにぶつかり、何十分も待たされることになりました。でも、待っている間にその団体の一人の気さくな男性と話はじめて、楽しく過ごすことができました。しかも、その方はなんとオープニングパーティの主賓、アメリカ太鼓連盟会長の田中誠一氏でした。
重要無形民俗文化財に認定されている方で、デーヴ・ブルーベックやデユークエリントンとテイクファイブやA列車を演奏し、またライジングサンという、ショーンコネリー主演の映画で太鼓を演奏したそうです。アメリカでの和太鼓のパイオニアです。

鼓童の藤本吉利さんは神がかった演奏をします。その奥様の容子さんの歌は、情感がこもっていて、太鼓をバックにした佐渡おけさは涙が出そうに素晴らしいものでした。

『石見の風』の今福優さん、堂本英里さん、末長愛さんの石見神楽は人々の健康や繁栄を祈願する楽しいものでした。また今福さんの太鼓は勢いがあり爽快なものです。

木村俊介さんは篠笛、津軽三味線、太鼓、何でも来いという感じで、『吉野の山』では、藤本容子さんの歌と合わせて篠笛の音色が、奈良時代か平安時代の華やいだ上品な雰囲気がよく出ていました。

その他、オープンパーティにいらした方は全米各地、サンフランシスコ、フロリダ、サンノゼ、ハワイから、またカナダ、イギリス、アルゼンチンなどからもいらしていました。人種も様々で、アジア系では、日系の人が多いのですが、韓国系や中国系の方もいらっしゃいました。

ワークショップのアトラクション

ワークショップのアトラクションで、表現の豊かさを競う太鼓のコンテストがあったのですが、我も我もと輪から中央に出てきて、踊りながら演奏していました。日系の人もアメリカ人と同じようにノリがよく、見ていて本当に楽しかったです。またリズムもジャズやロックやラップのような雰囲気があり、結構早打ちです。

様々な民族の人と同じ和太鼓をたたいているのを見ていると、平和の尊さを感じます。特に和太鼓の音色にはお寺の鐘のように唸りがあります。この唸りは天に我々の思いを届ける役割があると感じています。世界の平和を和太鼓で届けられればと思います。

またASANO DAIKO U.S. 社長の浅野勝二さん、奥様のジュリアさん、そのお兄さんのYuta Katoさん、そしてスタッフ皆様のご健康と、ご発展を祈念します。

2013/08/05

横浜ボートシアター第七金星丸での試演会 説教 愛護の若より 『恋に狂いて』

しばらく前の話になりますが、横浜ボートシアターの試演会は5月11日(土)と12日(日)と二日行われ、12日に行ってきました。

現存する説教節は「山椒大夫」、「刈萱」、「信徳丸」、「小栗判官」、「信太妻」、「愛護の若」の五つだそうですが、「愛護の若」だけは舞台化された記録がなく、また一切曲が残っていないものだそうです。今回の公演は、まだ朗読劇の形をとっているのですが、将来は横浜ボートシアターのヒット作『小栗判官照手姫』のように仮面劇にする予定とのこと。演出の遠藤さんは、80歳を超えていますが、新作に挑戦しています。

あらすじは、継母の子供いじめで、子供は滝壺に身を投げて自殺、その後、助けた人も、いじめた人も108名全て、身を投げて終わるというもの。
「いじめの本質をついた」説教節のおどろおどろしい迫力を感じました。何も救いがないような話なのですが、後味がそうでもないのは、腑に落ちるところがあるからだと思います。

今回は朗読に、エレキ三味線(説教節政太夫)やエレキギターおよび太鼓などの打楽器(松本利洋)の伴奏がついています。これがまた物語のおどろおどろしさを付加します。今回は朗読劇でしたが、俳優が仮面をつけ演技をすると、ますます人間の欲がむき出しになって表現されそうです。仮面劇の完成が期待されます。人形は遠藤さんが腱鞘炎になるほど、我を忘れて作成しているようです。