2017/05/10

防振板ゴムによる固体伝搬音対策の設計

 弊社では、工場や音楽スタジオの騒音対策などにおいて、防振ゴムでの固体伝搬音対策を得意としています。施工の際の注意点、施工事例も含め、まとめてみました。

【大型のファンやエンジンなどの騒音対策について】

 工場などにある大型のファンやエンジンなどの騒音対策と言えば、一般的には騒音源を壁などで囲って騒音を遮断することを考えるが、それだけでは駄目な場合がある。なぜなら、騒音の伝搬には主に2つの方法があり、空気伝搬音と固体伝搬音であるが、その固体伝搬音の寄与が大きい場合には壁を作ってもほとんど効果がないためである。

【空気伝搬音と固体伝搬音】

 空気伝搬音とは、文字通り空気を振動させて伝搬する音である。空気の振動が壁などを振動させ減衰しながら通過し、さらに空気を振動させて音として聞こえるものも含める。この空気伝搬音に対する対策は、主に壁などを設置することである。高速道路の様に防音塀等もこれである。

  固体伝搬音は、機械の振動などが床スラブなどの躯体を直接加振し、その振動が躯体を通って建物中に伝搬し、それぞれの場所で、建築部位が空気を振動させ放射するものである。固体伝搬音の特徴は、振動が建物中をグルグルと回り、地盤以外にはエネルギーが逃げて減衰するところが少ないことである。

 騒音の伝搬経路として他には、液体を伝搬する経路もある。これは海や川の生物が体感する音である。また宇宙へは音は伝搬しない。媒質が存在しないからである。

【固体伝搬音の騒音対策】

 集合住宅での飛び跳ね(床衝撃音)などの固体伝搬音対策の場合は、コンクリートスラブを厚くして振動をしにくくする方法をとることが多い。40~50年前の集合住宅はスラブ厚が薄く、120mm程度であったが、現在は床衝撃音対策のために、スラブ厚が厚くなり、ボイドスラブなど300mm近いものがある。この、「スラブを厚くする方法(インピーダンスを向上させる方法)」で、効果はスラブが倍の厚みになると約10dB小さくなる。集合住宅では、この方法が一般的になっている。ただしその上に設置する二重床はその性能を低減してしまうことが多く、まだ開発途上のテーマでもある。

 対策が難しいものと言えば、例えば工場の機械室の外壁が振動してスピーカーのように騒音が放射され、近隣住民などから騒音クレームが発生するような場合である。この場合、外壁の内側にさらに壁を設けてもほとんど効果は見られないことがある。それは機械の振動が直に建物の躯体を振動させ(固体伝搬音)、外壁から騒音が放射しているためであり、内壁の設置では伝搬経路が遮断できていないためである。

【大型機械の防振基礎】

 工場の大型機械の固体伝搬音対策として一般的に行われているのが、防振基礎を作り、上に機械を設置して、機械の振動を躯体に伝搬することを遮断する方法である。防振基礎のばね材は、防振ゴムが一般的であるが、その他に金属ばねや空気ばねなどがある。

【防振基礎の固有振動数の設定】

 防振ゴムで機械等を支持した防振基礎は、防振ゴムの動的ばね定数と、その上の機械等の荷重により決まる固有振動数を持つ。ただし、ある周波数(固有振動数の√2倍)以上では振動が低減するが、固有振動数の周波数では振動は増幅し、加振力も増幅してしまう。そのため、その固有振動数を、防振ゴムがばねとして機能する限界まで低い周波数に設定することが課題となる。
人間の音の可聴周波数は20Hz程度が最低周波数と言われており、固有振動数を、それを下回る15Hz以下に設定できれば、20Hz程度以上の騒音を低減できるため、そこを目標とする。

【振動伝達率の予測】

 防振ゴムで支持した防振基礎を単純化して考えると、ばねの上に錘のある1自由度系の振動の場合には、以下の(1式)の様に振動伝達率を表すことができる。この式に固有振動数f0=15Hzを代入し、振動伝達率を求めるとf=√2f0=21Hzのとき、τ=1となり、それ以上の周波数で振動が低減し始める。例えば50Hzではτ=0.1となり、対数で表すと20dBの低減が予測でき、さらにそれ以上の周波数では0.1を下回っていく。インピーダンスの向上(スラブ厚を厚くすること)で得られる効果は10dB程度であるが、防振基礎ではそれ以上の20dB程度の効果が期待できる。





 ただし周波数が大きくなればなるほど、防振ゴムによる振動伝達率のグラフの様に振動伝達率の値は小さくなるが、基礎のモードの影響やロッキングなどの、また支持しているスラブなどの固有振動数のために、効果は20dB前後が限度と考えていた方が安全である。

注意点1: 防振基礎の固有振動数と機械の回転数が重なる場合
 機械の回転数(加振周波数)が、防振基礎の固有振動数前後にある場合などは、振動が増幅してしまい、機械にもスラブにも影響が大いという問題が起こる。この場合、周波数をずらす必要がある。できれば、機械の加振力周波数は、固有振動数の√2以上である必要がある。

注意点2: 加振力の大きな機械の場合
 防振基礎には、防振架台による方法と、さらに架台に付加質量を設定して、機械の振動を低減する方法もある。加振力の大きな機械の、防振基礎を低い固有振動数に設定しても、防振ゴムが柔らかいために機械自体が大きく振動をしてしまう場合がある。この場合には架台にコンクリートなどで質量を付加して、その分支持する防振ゴムの数を増やし、機械側の振動を抑えることも行われる。

【音楽スタジオなどへの応用】
 機械の基礎等に使われる以外に、音楽スタジオなどでも防振基礎は必要とされ、部屋全体を防振ゴムに支持して構築する。この場合には、防振構造と一般の構造では、同様の仕様でも10dBほど遮音性能が向上する。

【防振ゴムの選択】
 弊社では四角い防振ゴムをよく使っている。これはコストが安価であり施工がしやすいためであるが、ホームセンターで入手できるようなものではなく、専門のメーカーにより防振ゴムとして製造されたもので、しかも動的ばね定数がはっきりしていることが条件である。

【施工事例写真】

F楽器スタジオ
F楽器スタジオ竣工後

映画館
映画館竣工後

T録音スタジオ
T録音スタジオ施工後

公共ホール
公共ホール竣工後

太鼓スタジオ
太鼓スタジオ竣工後