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2017/09/21

渡辺翁記念会館のコンサート (山口県宇部市)

建築学会中国大会が8/31~9/3まで広島工大で開かれ、我々は9/2~9/3参加し9/3の午前中にアントニオが発表をしました。発表は無事に終了し、多くの方から質問もいただき手ごたえを感じました。

発表の後、私は新山口まで古くからの友人に会いに行きました。そして以前から気になっていた宇部にある渡辺翁記念会館(村野藤吾設計)に車で連れて行ってもらいコンサートを聴きました。
渡辺翁記念会館
ちょっと遅れて到着したために2F席になってしまいましたが、音は非常に大きく聞こえ、びっくりしました。たしかに噂に聞く素晴らしい音です。一番後ろのティンパニーの音もはっきりと方向感を持って大きく聞こえていました。

2階席から
主催および演奏は、宇部市民オーケストラ(指揮 高橋 敦)で、曲目は1.ムソルグスキー交響詩「禿山の一夜」、2.チャイコフスキーピアノコンチェルト第一番、アンコール「オルゴール」、3.チャイコフスキー交響曲第一番「冬の日の幻想」でした。われわれは2曲目のピアノ協奏曲から聞くことができました。ピアノ演奏者(尾形大介)も迫力がありました。

渡辺翁記念会館は今年で開館80周年になるそうで、80周年イベントがたくさん企画されていました。開館は1937年(昭和12年)です。昭和2年(1927)、初めての音響設計とされている早稲田大学大隈講堂が完成、昭和4年(1929)日比谷公会堂、昭和5年名古屋公会堂、そして昭和12年宇部市渡辺翁記念会館、同年、浅草国際劇場が出来ています。中之島中央公会堂は大正7年(1918)に開館で、なかではずいぶん先を走っている公会堂です。それでも渡辺翁記念会館は、公会堂建築のほぼ先端にいます。

村野藤吾は1891年生まれ、1984年に亡くなりました。工業高校を卒業後、八幡製鉄所で働いていますが、1913年に早稲田大学の電気工学科に入学し、その後建築に転入して、1918年に卒業しています。渡辺翁記念会館の完成は約46歳のとき。このホールの音響設計は大隈講堂の設計方法を参考にしたかどうか気になるところです。大隈講堂は、おそらく舞台の音が観客席に効率よく伝搬する様に設計されています。断面形状が放物線のようになっています。大隈講堂は以前に3Dレーザースキャンで空間測定とインパルス応答で音響測定も行っているので、今回建築学会で発表した川越鶴川座と同様の方法で近いうちに分析してみようと思っています。

渡辺翁記念会館も天井の形状を見ると、天井からの反射音が直接音を補強しているとみられ、そのために大きな音に聞こえるのだろうと思っています。

天井の形状
村野藤吾は宇部に縁があるらしく、旧宇部銀行本店も設計しています。現在はヒストリア宇部という市の建物になっていて、Caféがあり、空間の貸し出しもしています。オーケストラが練習できそうな大きさの講堂(約13m×16m×約10m(推測))の様な空間もあります。

ヒストリア宇部(旧宇部銀行本店 村野藤吾設計)

宇部市は当初、石炭産業で急速な発展を遂げています。その基礎を築いたのが、渡辺祐策翁で、石炭と石灰岩をつかってセメントも製造していました。いまは、石炭は掘りつくしてしまい、宇部興産として主に化学産業分野で活動しているようです。宇部の海岸側に広大な工場があります。
ただ町はどこにもある老齢化と人口減少で悩んでいるようです。新しい若い人を受け入れられる産業が必要と思います。

しかし一方で、この地は、ユニクロの柳井氏の出身地だそうで、大きな工場もあるとのこと。また元首相の菅直人氏もここの宇部高校(私の古くからの友人もここ出身)にいたようです。その後、東京都の小山台高校に転入し、東工大に入っています。私の高校・大学の1年先輩になります。

また、新しいエネルギーも感じる場所もあります。隣の小野田市に焼野海岸という浜があり、ここはきれいでした。人工物はほとんどなく、隈研吾設計のカフェが中央に存在しています。行ってみたら残念ながら満席で入れませんでしたが、ちょっと覗くと2階は四角のテーブルを囲んで5~6名の白髪の日本人、対するはヨーロッパ系と思われる5~6名の外国人です。何かプロジェクトをはじめようとしているかなという雰囲気。そうであれば面白いです。ここから眺める夕陽は最高です。反対側は九州が見えました。

Sol Poniente 隈研吾設計
 

2017/09/06

2017年度日本建築学会大会(中国)発表 9/3(日)
Speech at the Architectural Institute of Japan (AIJ 2017)

「川越市鶴川座の音響的復原 -その1 3Dレーザースキャンデータの音響シミュレーションへの応用-」と題して発表いたしました。

本報告は、東京大学生産技術研究所の助教 森下有 氏、ベルリン工科大学のクレメンス・ビュトナー氏、および弊社の共同研究になります。

発表者は、YABのアントニオ・サンチェスです。


東京近郊に残る唯一の木造芝居小屋である川越市の鶴川座の内部空間を、3Dレーザースキャナーによる測定(東京大学)および音響測定を行い、3DスキャンデータからCADデータに変換を行った上で空間の音響シミュレーションを行いました。またその結果を音響測定の実測値と比較をしています。

3Dスキャンデータは膨大な点群データであるため、CADデータに変換する前に、Cloud Compareというフリーソフトを用いて、測定点の間引きを行っており、この方法は今回初めて行った手法でしたが、有効であったと考えられます。

また鶴川座が芝居小屋であった当時の音響的な特性の復原にも、これら一連の方法が有効な手法であると確かめられました。

発表後には多くの方からご質問、ご意見をいただきました。質疑応答の内容につきましてブログに追記する予定です。

英語、スペイン語テキストの後に、発表のパワーポイントを転載いたします。
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This year, for the second time, I had again the opportunity to give a speech at the annual meeting of the Architectural Society of Japan (AIJ 2017). The meeting was held on 1st, 2nd and 3rd of September in the Hiroshima Institute of Technology.

As commented in a previous entry of YAB blog, our speech was about the application of 3D laser scan data to acoustic simulations for the restoration of the acoustic characteristics of Tsurukawa Playhouse. This work was made together with Mitsuru Yabushita (YAB Corporation), Yu Morishita (The University of Tokyo) and Clemens Büttner (Berlin Institute of Technology).

In response to their interest in our work, the members of AIJ, including notable teachers, asked a great number of questions after the presentation. The opinions and comments were related, among others, to the possible causes of the long reverberation time results, implementing of the gaps in the ceiling and scattering coefficients used in the materials during the simulation. They were also impressed by the method of transformation from point cloud to geometrical mesh using the free software CloudCompare. Furthermore, auralizations for both, real site and simulation, were made based on the impulse responses obtained.

The effectivity of this work for the restoring of the acoustic characteristics of Tsurukawa was confirmed by the members of the Wooden Playhouses Study Group in a meeting held few days before the AIJ presentation.

I am very grateful to Mitsuru Yabushita and Akiko Yabushita for their help and support.

Antonio
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Este año, una vez más, he tenido la gran oportunidad de presentar en japonés como ponente en la conferencia anual del Instituto Japonés de Arquitectura (AIJ 2017) celebrada los pasados días 1, 2 y 3 de Septiembre en el Instituto Tecnológico de Hiroshima.

Como ya comenté en previas entradas del blog de YAB, nuestra ponencia trató sobre la aplicación del escáner láser 3D a simulaciones acústicas para la restauración de las características acústicas del teatro de Tsurukawa. Un trabajo conjunto con Mitsuru Yabushita (YAB Corporation), Yu Morishita (Universidad de Tokyo) y Clemens Büttner (Instituto Tecnológico de Berlín).

En respuesta al interés de nuestro trabajo, miembros de la AIJ que incluían profesores de renombre, realizaron un gran número de preguntas después de la presentación. Las opiniones y comentarios estaban relacionadas entre otras, a las posibles causas de la obtención del largo tiempo de reverberación en las simulaciones. También se habló sobre la implementación de los huecos existentes en el techo y los coeficientes de dispersión de los materiales usados para la simulación. Además, quedaron impresionados por el método de conversión de nube 3D de puntos a la malla geométrica en AutoCAD con la utilización del programa gratuito CloudCompare. También se realizaron auralizaciones a partir de las respuestas impulsivas obtenidas en las mediciones in-situ y simulaciones.

Le agradezco mucho a Mitsuru Yabushita y Akiko Yabushita, por su ayuda y confianza en mí.

Antonio
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Auralizations:

Simulation:



Real measurements :